d.地域条件を活かした健全な家畜飼養のための放牧技術の開発

課題名 d.地域条件を活かした健全な家畜飼養のための放牧技術の開発
課題番号 2009013853
研究機関名 農業・食品産業技術総合研究機構
研究分担 (独)農業・食品産業技術総合研究機構,北農研,集約放牧研究チーム
(独)農業・食品産業技術総合研究機構,東北研,日本短角研究チーム
(独)農業・食品産業技術総合研究機構,近農研,粗飼料多給型高品質牛肉研究チーム
(独)農業・食品産業技術総合研究機構,九州研,周年放牧研究チーム
(独)農業・食品産業技術総合研究機構,畜草研,山地畜産研究チーム
(独)農業・食品産業技術総合研究機構,畜草研,放牧管理研究チーム
協力分担関係 岡山県総合畜産センター
徳島県農林水産総合技術センター畜産研究所
広島県立総合技術研究所畜産技術センター
山口県農林総合技術センター
東北大学
大分県農林水産研究センター
(社)農林水産先端技術産業振興センター
北海道大学大学院
北海道立畜産試験場
麻布大
研究期間 2006-2010
年度 2009
摘要 多様な飼料資源を活用した放牧技術を開発するため、1)水田地帯の周年放牧では、補助飼料等を放牧地に多量に持ち込むと、土壌中のアンモニア態窒素濃度や大腸菌密度が上昇することがあるため、給餌場を1ヶ所に固定せず、放牧地内でローテーションする等の対策が必要であることを明らかにした。2)落葉広葉樹林では、7~8月、特に、ミヤコザサが林床に豊富にある場合は8月に、緑葉部重が最大となるため、生産量が5~6月に最大となる牧草よりも遅い時期に放牧の適期が存在することを確認した。3)大豆粕の代替飼料として液化仕込み清酒粕を給与することにより、野草等を活用した経産牛の放牧飼養では血中遊離脂肪酸値が低下する一方、血糖値は適正範囲内で増加し、栄養状態の改善効果を認めた。また、育成牛でも、同様な給与により育成中期以降における日増体重が増加する効果を確認し、放牧時の補助飼料として液化仕込み清酒粕が有効なことを示した。 高栄養牧草の利用による集約放牧酪農技術を開発するため、1)放牧牛乳に多く含まれる人の体に有用な成分である共役リノール酸濃度は、モッツァレラタイプチーズを製造過程を通して高く維持されることを確認した。2)搾乳牛の集約放牧にはメドウフェスクが利用9年目を経過しても永続性に問題がなく適草種であることを確認した。また、高栄養牧草を利用した集約放牧において、補助飼料としてとうもろこしサイレージを併給すると、濃厚飼料の給与量を1日1頭当たり乾物で1kg以上削減できることを明らかにした。3)搾乳牛の集約放牧時の補助飼料として、グラスサイレージTMRの代わりにとうもろこしサイレージTMRを給与することにより、乳中尿素態窒素濃度が好適範囲以上に上昇することを抑え牛の栄養障害が回避できる可能性を示した。また、放牧地におけるふん尿由来の温室効果ガスの動態として、牛尿ではメタン発生はないが、亜酸化窒素の発生量は生ふんよりも多いことを明らかにした。 公共草地資源の活用による日本短角種の放牧技術を開発するため、1)日本短角種母牛から生まれた黒毛和種胚移植子牛は、放牧地において1ヶ月齢までの日増体量が標準発育曲線より高く、その後も高い体重を維持することを明らかにした。2)20年度に特許を申請した発情同期化法(Flex-Synch法)は、黒毛和種及び日本短角種いずれにおいても優良な手法であることを再度確認した。また、本手法を用いると分娩後の生殖器機能も早期に回復し、母牛の分娩間隔の短縮にも有用であることを示した。3)アブのトラップでは、アブ捕殺用ボックストラップに黒色ビニール製の改良型誘引体を取り付けると捕獲効率が高まることを確認した。また、アブの防除では、フルメトリン油剤とトラップの併用により相乗効果が得られる可能性を示した。4)青森県内の畜産農協で生産された有機(候補)牛肉の脂肪酸のうち、n6系脂肪酸とn3系脂肪酸の比率(n6/n3比)は人の健康に好ましいと推奨される4以下の値であることを示した。5)放牧終了時から5ヶ月間にわたり稲わら及び配合飼料を給与すると、牛肉脂肪の揮発性成分であるアルデヒド、アルコール、テルペノイド類の有意な減少とラクトン類の有意な上昇が起こることを明らかにした。 遊休農林地等を活用した黒毛和種経産牛の放牧技術を開発するため、1)中国山地及び近畿中国地域の日本海側における放牧期間延長技術の開発に向けて、イタリアンライグラス草地で冬季放牧を行う場合、早播することで、黒毛和種経産牛にとって適正な栄養価の十分な草量を確保できることを明らかにした。2)小規模移動放牧における栄養管理等に関する問題について科学的知見から解説した指導普及者向けのマニュアル「よくわかる移動放牧Q & A」を刊行した。3)黒毛和種放牧牛を対象に、遠隔地でモニタリングできる腟内温度計を用いて発情を検知するための判定条件を明らかにした。さらに、分娩後40日の時点で2回目の発情周期にある牛では、過剰排卵処置時にCIDR(黄体ホルモン製剤)を使用しなくても、早期の胚回収が可能なことを示した。4)耕作放棄地における小規模移動放牧に適した飼養管理技術を開発するため、放牧によってシバが増加しクズが衰退すること、野草のカルシウム、マグネシウム、カリウム含量は肉用牛繁殖雌牛にとって適切な水準にあるが、リン含量はやや不足気味であることを明らかにした。さらに、20年度に開発した牧草生産量を推定可能なワークシートに基づいて放牧地の潜在牧草生産力及び牧養力を提示するシステムを構築するため、牧草生産量データベースを拡充するとともに、放牧可能日数を出力する機能を開発した。  高栄養暖地型牧草を利用した肉用牛の低コスト周年放牧技術を開発するため、1)高栄養暖地型牧草を利用した周年放牧において、褐毛和種の日増体量(0.8~1.4kg/日)は黒毛和種(0.5~0.9kg/日)よりも高く、褐毛和種はとうもろこしサイレージの併給なしで出荷目標体重の700kgに達することを明らかにした。また、本放牧において、枝肉重量は黒毛和種で355kg、 褐毛和種で444kgであり、肉質等級は黒毛和種でB-2、褐毛和種A-2であったことから、周年放牧により仕上げ肥育できる可能性を示した。2)中山間地の耕作放棄地を活用して、とうもろこし栽培を拡大するため、前植生の刈払いと出芽前及び生育初期の除草剤処理を組合せたとうもろこしの不耕起栽培法を開発した。3)放牧により仕上げ肥育した牛肉は、牧草由来の栄養成分を定量することにより検証できることを明らかにするとともに、本牛肉で抗酸化成分であるカルノシン含量が高いことは、飼養環境が健康的な条件であったことを裏付けるものと推測した。また、放牧後にとうもろこしサイレージによる仕上げ肥育を行った牛肉の食味は慣行肥育と同等であることを明らかにした。4)サイレージ用とうもろこしの優良品種の育成に向けて、「Mi29」と組換え自殖系統(RILs)とのF1から有望系統を選抜した。イタリアンライグラスでは、初期生育性、冬期の再生性に優れる育成系統や春播性の高い材料から第2次選抜基礎集団を養成した。トールフェスクでは、「九州14号」、「九州15号」が暖地において「ナンリョウ」より多収で、越夏後の収量が高く維持されることを明らかにした。5)周年放牧においてシバ草地からイタリアンライグラス草地へ移行する間の端境期(10月中旬~12月中旬)において、飼料用稲を繁殖牛1頭当たり8.3a割り当てて、立毛状態で放牧利用すると、補助飼料として乾草を給与することなく約70日間の放牧が可能であることを明らかにした。 放牧牛の栄養要求量と摂取量の解明に基づき精密栄養管理技術を開発するため、1)放牧牛の採食量を推定する方法として、3つの放牧形態(搾乳牛1日輪換放牧、育成牛輪換放牧、繁殖牛定置放牧)における放牧草採食量を牧草現存量や放牧密度などの容易に入手できる変数から簡易に推定する式を作成した。2)主要放牧草であるペレニアルライグラス(PR)のTDN含量は、春は78%と高いが、夏には69%に低下し、秋にはやや回復することを明らかにした。また、放牧草TDN含量を推定する既存の式は、実際よりも10~15%程度過小推定することを明らかにし、PR主体放牧草用のTDN含量推定式を新たに作成した。3)搾乳牛を対象に、時間制限放牧における割り当て草量と採食量の関係式を作成した。また、濃厚飼料の給与量が放牧草の摂取量に及ぼす影響を検討し、家畜への濃厚飼料の給与量を1kgDM減少(増加)させるとTDN70%の放牧草の採食量は0.645kgDM増加(減少)することを明らかにした。これらの数値を用いることにより、放牧草地からの栄養摂取量の推定精度を向上させることができる。4)放牧飼養では、骨格筋の増殖を抑制する遺伝子の発現が減少する一方、筋肉量の増加に関与する遺伝子の発現量が増加する傾向を認め、放牧が筋繊維肥大に関与している可能性を明らかにした。 放牧導入が家畜の健全性と経営に及ぼす効果を解明するため、1)ワクチン接種に対する応答能を比較したところ、放牧経験牛は、牛伝染性鼻気管炎及び牛パラインフルエンザ3型に対して、放牧未経験の舎飼い牛よりも高い抗体価を獲得することを明らかにした。また、育成牛に対して、放牧で想定される速度(1.7km/h程度)の1時間歩行を週4回の頻度で、2週間にわたって実践しても、末梢血貪食能や単核球サイトカイン産生能は抑制されないこと、秋期に1日当たり6時間の日光浴を2週間にわたって行わせると、自然免疫を担うγδT 細胞機能が亢進することを明らかにした。2)短角牛繁殖経営では、地域内での組織的飼料生産・供給が中規模頭数飼養農家の維持に有効であることを明らかにした。3)畜産農家経営における小規模移動放牧の展開・定着に影響を与える土地貸借、助成制度の実態及び条件を明らかにした。
カテゴリ 病害虫 イタリアンライグラス 管理技術 経営管理 飼育技術 出荷調整 除草剤 飼料用作物 水田 大豆粕 中山間地域 データベース 低コスト とうもろこし 肉牛 乳牛 繁殖性改善 品種 不耕起栽培 防除 放牧技術 モニタリング 良食味

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