水田輪作体系乾田直播栽培における収量マップを用いた基肥可変の施肥増収効果

タイトル 水田輪作体系乾田直播栽培における収量マップを用いた基肥可変の施肥増収効果
担当機関 (国研)農業・食品産業技術総合研究機構 東北農業研究センター
研究期間 2012~2017
研究担当者 関矢博幸
林和信
宮路広武
紺屋秀之
栗原英治
細川寿
宮本宗徳
金谷一輝
長坂善偵
齋藤秀文
冠秀昭
中山壮一
松波寿典
篠遠善哉
赤坂舞子
池永幸子
谷口義則
西田瑞彦
高橋智紀
大谷隆二
発行年度 2017
要約 大区画圃場の水田輪作体系乾田直播栽培において収穫情報マッピングシステムの収量マップを利用して基肥窒素を可変施肥することにより水稲収量が7~17%増収する。基肥窒素の可変施肥による単収の増加により60kgあたり費用合計を3ポイント程度低減できる。
キーワード 収量マップ、収量情報マッピングシステム可変施肥、水田輪作、乾田直播
背景・ねらい 仙台平野の津波被災水田では、復旧に伴う圃場基盤整備や圃場合筆により圃場の大区画化が進み、プラウ耕・グレーンドリル播種の稲-麦-大豆2年3作水田輪作体系等の効率的な作業体系の導入が可能となった。しかし、圃場の大区画化に伴い地力ムラ等に起因する水稲の倒伏等の減収リスクが顕在化し、倒伏を回避するための少ない窒素施肥量水準で均一施肥を行うことにより収量が低下している事例がある。増収を図るためにほ場内の収量や生育の分布を正確に把握して管理する技術が求められているが、現状ではほ場1筆単位での集計にとどまっている。そこで新たに開発した収量コンバインを利用した稲麦用収穫情報マッピングシステムで出力される収量マップを用いて基肥窒素の可変施肥を行い、大区画水田における2年3作水田輪作体系乾田直播栽培の収量性向上とコスト低減を実現する。
成果の内容・特徴
  1. ほ場内の収量マップを出力する稲麦用収穫情報マッピングシステムは、グレンタンクに投入される穀物流量等を連続的に測定可能な収量センサやGNSS受信機を備えた収量コンバインと、取得した時系列データを用いてマッピング処理を行うGIS機能を備えたコンピュータプログラムなどから構成される(図1)。
  2. 穀物流量等のデータ収集は収穫作業中に自動的に行われ、作業速度等を考慮して穀物流量を面積当たり収量に変換し、GNSS位置情報に基づきほ場内位置への対応付けを行う。これらの情報は、任意のメッシュサイズに集計しマップとして表示することや数値データとして出力することができる。各種センサ情報から稈長とワラ量も同様に出力できる。
  3. 生成された収量マップは、坪刈り等により測定された収量等と一定の相関があり(図1)、ほ場内の収量等の傾向を視覚的に把握できるとともに(図2)、数値データは可変施肥等のほ場内の精密な肥培管理に利用できる。
  4. 大区画水田2年3作輪作体系乾田直播栽培における基肥窒素の可変施肥は、収量コンバインによる収量マップ、施肥マップソフトウェア、可変施肥対応ブロードキャスタを用いる(図3)。
  5. 可変施肥の基礎となる場所毎の土壌窒素吸収量は、均一施肥管理圃場で取得した収量マップと籾収量-稲窒素吸収量の関係式から稲窒素吸収量を換算し、施肥由来窒素量を差分して求める。場所毎の基肥窒素施肥量は、目標収量を達成する稲窒素吸収量から土壌窒素吸収量を差分して必要な施肥由来窒素量を求め、肥料の窒素利用効率を勘案して施肥マップとする。施肥マップは施肥マップソフトウェアを用いて実行ファイルに変換し、可変施肥対応ブロードキャスタに入力する。可変施肥作業はGNSS位置情報とリンクして自動制御される。可変施肥の効果は収量マップで検証し、次作の施肥マップに反映する(図3)。
  6. 宮城県仙台平野の2年3作輪作体系大豆跡乾田直播栽培における2016年の3.4ha可変施肥実証ほ場の全刈り精玄米収量は574kg/10aで、1.5ha対照ほ場(現地農家慣行の基肥無施肥)より17%(83kg/10a)多収である。2017年の2.2ha実証ほ場の全刈り精玄米収量は基肥可変施肥区が585kg/10aで、対照区(無施肥)より7%(36kg/10a)多収である(表1)。
  7. 2016年の基肥可変施肥+追肥に掛かる追加費用は3.4千円/10a、2017年の基肥可変施肥に掛かる追加費用は3.0千円/10aと試算される。両年とも追加費用を上回る収益増を実現し、精玄米収量60kgあたり費用合計を3ポイント程度低減できる(表1)。
成果の活用面・留意点
  1. 普及対象:水稲および麦類を栽培する農業者
  2. 普及予定地域・普及予定面積・普及台数等:収量コンバインについて全国1.5万ha(30ha/台×500台[5年間])を見込む
  3. その他:
    1)稲麦用収穫情報マッピングシステムを構成する収量コンバインは市販機種であり、クラウドを利用した営農情報管理システムへの情報蓄積に対応している。この営農情報管理システムに開発したマッピング機能を実装し、2020年度までに社会実装を図る予定である。
    2)籾収量と稲窒素吸収量の関係式は品種、地域毎に調査データに基づき設定する。施肥マップソフトウェアはTOPCON社「施肥マップ」等を利用する。可変施肥対応のブロードキャスタは実証試験に使用したVicon社ROEDW1500GEO等を利用する。 
研究内容 http://www.naro.affrc.go.jp/project/results/popular/result080/2017/17_003.html
カテゴリ 肥料 乾田直播 管理システム 自動制御 水田 水稲 施肥 大豆 低コスト 播種 肥培管理 品種 輪作 輪作体系

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