課題名 | b.地域条件を活かした飼料用稲低コスト生産技術及び乳牛・肉用牛への給与技術の確立 |
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課題番号 | 2010014840 |
研究機関名 |
農業・食品産業技術総合研究機構 |
研究分担 |
(独)農業・食品産業技術総合研究機構,東北研,東北飼料イネ研究チーム (独)農業・食品産業技術総合研究機構,中央研,関東飼料イネ研究チーム (独)農業・食品産業技術総合研究機構,中央研,北陸大規模水田作研究チーム (独)農業・食品産業技術総合研究機構,近農研,中山間耕畜連携・水田輪作研究チーム (独)農業・食品産業技術総合研究機構,九州研,イネ発酵TMR研究チーム |
協力分担関係 |
岐阜農業技術センター 鹿児島県農業開発総合センター 新潟県農業総合研究所 山形県農業総合研究センター 福島県農業総合センター 日本女子大学 農環研 家畜改良センター 秋田県農林水産技術センター 富山県農林水産総合技術センター |
研究期間 | 2006-2010 |
年度 | 2010 |
摘要 | 地域条件に応じた飼料用稲の栽培管理技術の開発については、1)東北農業研究センター、岩手県、宮城県、山形県、秋田県の公設試験研究機関、山形大学および秋田県立大学で実施した、飼料稲の低コスト栽培技術、高品質安定化と肉用牛への給与技術および定着条件と経営評価に関する研究成果をとりまとめて『寒冷地における稲WCSの生産利用技術集』電子版を作成し、東北地域の普及機関を中心とする約120機関に配付した。また、寒冷地における飼料稲栽培の施肥法、雑草・病害虫防除方法および東北三県における飼料稲生産具体的技術をとりまとめた『寒冷地における飼料イネ栽培マニュアル』を作成した。2)21年度に開発した稲こうじ病発生危険度診断プログラムに、新たに発生抑制パラメータとして田畑輪換、石灰窒素、各種薬剤の情報を加えることで診断精度を向上させた。3)多用途水稲の育苗箱数節減による生産コスト低減技術として、現行よりも30%栽植密度が低い疎植栽培法が、収量において慣行基準に劣らず実用的であることを実証した。飼料用稲収穫技術の開発については、1)19年度に開発・市販化したロールベール運搬装置について、現時点で装着可能な収穫作業機以外の機種への適用を検討し、装着上の問題点を明らかにした。2)細断型飼料稲専用収穫機によって生産された高品質サイレージについて飼料生産基盤が脆弱な畜産地帯でも安心して利用できる体制を構築するため、飼料稲の生産履歴管理システムを作成した。3)飼料イネハーベスタ試作1号機の長稈対応への改良を進めた結果、高さ163cmのヘイオーツの2条刈りまでは対応可能であることを刈り取り試験で明らかにした。また、牧場調製型収穫・調製システムの開発に向け、高出力の飼料イネハーベスタ2号機を試作し、現地において、収穫、ダンプトラックによる運搬、ベールラッパ一体型細断型ロールベーラでのロール調製まで、順調に動作することを確認した。 高品質サイレージ調製技術の開発については、1)飼料イネ中のβ-カロテン含量は生育ステージの進行により急激に減少し、完熟期の飼料イネはビタミンAコントロール肥育に使用できることを明らかにした。2)焼酎粕濃縮液の季節的変動を明らかにするとともに、飼料イネ(稲発酵粗飼料、飼料米)や粗蛋白質含有量が20~55%の焼酎粕濃縮液等を原材料とするサイレージ調製(発酵TMR)での発酵特性や飼料構成を提示した。 飼料用稲の乳牛・肉用牛への給与技術の開発については、1)稲発酵粗飼料(イネWCS)の発酵TMR給与により牛乳中のビタミンEが増加すること、肥育後期5ヵ月間にイネWCSを2kg給与してもイネWCSのβ-カロテンが脂肪交雑に影響を与えないことを示した。2)肉用去勢牛への飼料イネ、焼酎粕濃縮液等の発酵TMR給与技術においては、黒毛和種肥育牛の肥育前期への発酵TMR給与効果を確認し、仕上げ期では飼料米(無破砕)とカンショ焼酎粕濃縮液を活用した濃厚飼料型発酵TMR給与で良好な枝肉成績が得られ、普及技術として提示した。肥育牛の肥育前期から後期までの飼料用稲を活用する発酵TMR給与モデルを提示した。3)飼料イネ・焼酎粕濃縮液等の発酵TMRを乳用牛および肉用牛へ給与する現地実証試験を踏まえて、給与設計を示した。飼料自給率(TDN換算)は泌乳牛では20ポイント以上、肥育牛では40ポイント以上向上し、普及現場では黒毛和種繁殖牛の場合約100%を達成している。 耕畜連携システムの成立条件の解明については、1)飼料用米生産を実施している経営の地域間比較を行い、最も低コストな場合で89円/kg(粗玄米)の生産費を達成していることを明らかにし、専用品種の受け入れ態勢整備が不可欠であることなど、普及拡大に必要なポイントを摘出した。2)牧草、飼料イネ、イネWCS、再生稲を組み合わせ、繁殖牛1頭当たり38aの水田面積で周年放牧が可能であり、畜産経営では省力化と規模拡大が図れ、耕種経営では耕作放棄地の解消を含め農林地管理面積が拡大できることを実証した。また、再生稲と牧草を利用した水田裏作放牧は、低コストで30~40カウディの牧養力が確保でき、畜産・耕種農家とも収益確保が期待できることを示した。さらに、ほ場でロールベールを牛に無駄なく給餌できる可搬給餌装置を開発した。3)イネWCSを繁殖牛の主飼料とする子牛生産の環境負荷をLCAにもとづき評価し、輸入飼料依存の飼養に比べ、温暖化への影響は大きくなるが、エネルギー消費や酸性化、富栄養化の面での環境負荷は低くなること、また、周年放牧モデルによる子牛生産は、すべての項目で輸入飼料依存の舎飼飼養を下回る環境負荷となることを明らかにした。 |
カテゴリ | 病害虫 育苗 稲こうじ病 かんしょ 管理システム 規模拡大 経営管理 コスト 栽培技術 雑草 市販化 収穫機 省力化 飼料用米 飼料用作物 水田 施肥 低コスト 肉牛 乳牛 繁殖性改善 病害虫防除 品種 薬剤 |