b.地域条件を活かした飼料用稲低コスト生産技術及び乳牛・肉用牛への給与技術の確立

課題名 b.地域条件を活かした飼料用稲低コスト生産技術及び乳牛・肉用牛への給与技術の確立
課題番号 2006008474
研究機関名 農業・食品産業技術総合研究機構
研究分担 農業・食品産業技術総合研究機構 近畿中国四国農業研究センター 中山間耕畜連携・水田輪作研究チーム
農業・食品産業技術総合研究機構 中央農業総合研究センター 北陸大規模水田作研究チーム
農業・食品産業技術総合研究機構 九州沖縄農業研究センター イネ発酵TMR研究チーム
農業・食品産業技術総合研究機構 畜産草地研究所 関東飼料イネ研究家畜飼料サブチーム
農業・食品産業技術総合研究機構 東北農業研究センター 東北飼料イネ研究チーム
協力分担関係 岩手県農業研究センター
宮城県農業・園芸総合研究所
宮城県古川農業試験場
新潟県農業総合研究所
茨城県農業総合センター
茨城県畜産センター
鳥取県農業試験場
広島県立農業技術センター
岡山県農業総合センター
農業技術協会
研究期間 新規2006-2010
年度 2006
摘要 飼料用稲低コスト生産技術と乳牛・肉用牛への給与技術の開発が、地域条件を活かして全国で展開された。東北地域では、(1)飼料イネ栽培における未熟堆肥の多投入は、完熟堆肥の多投入に比べて環境に与える影響が大きいこと、飼料イネ品種「べこあおば」への堆肥など窒素投入量が増加すると飼料イネ水分低下が遅れるが、籾黄化率や葉色値で収穫適期が判定できることを明らかにした。(2)直播栽培がタイヌビエ残草量に及ぼす影響については、残草量の予測モデルを作出し除草期間と残草量の関係を明らかにした。(3)自脱コンバインを飼料イネ刈り倒し作業に使用するための部品開発を進め、飼料用稲の予乾処理における乾燥速度および収穫コストを示した。さらに、現地での実証試験を行って作業能率を示した。(4)育成牛に対する予乾稲発酵粗飼料給与は、嗜好性が良好であり、肥育前期には血漿ビタミンE濃度が高く、給与作業において軽量化が図られるなど優れた技術であることを明らかにした。(5)稲発酵粗飼料開封後の品質低下防止に効果があるロイテリン生産性乳酸菌を用いたサイレージ調製法を特許出願した。(6)飼料用稲等を基軸とした耕畜連携システムの成立条件解明のための調査によって、飼料用稲が小規模な谷間で栽培されている営農試験地では、圃場ごとの収量格差が大きく、とくに直播栽培でそれが顕著である事が判明した。北陸地域では、(1)北陸地域に応じた飼料用稲の直播栽培技術では、葉色(SPAD値)を指標とした飼料イネの直播栽培における収量確保のための生育診断法を確立し、「夢あおば」の不耕起湛水直播栽培を提唱して実証した。また、飼料の栄養価や嗜好性の改良を図るため、黄熟期の稈・葉鞘における非構造性炭水化物(NSC)含有率の品種間差を解明した。(2)飼料イネの病害虫防除技術では、有毒成分を産出するイネ稲こうじ病の診断や抵抗性品種の選定に向け、土壌中や稲体からの菌の効率的検出を可能とする分生胞子の大量形成方法やリアルタイムPCR法による菌糸由来の微量DNAの検出法を確立した。(3)ロールベーラによる飼料用稲収穫技術と高品質サイレージ調製技術では、ロールベール運搬装置の堅牢性の向上、逆転防止装置の追加、ワラ詰まり防止等の改良を行い実用性を高め、また、WES(米国陸軍水理研究所)の走行の可否判定手法をフレール型収穫機用に改良して、コーン指数(CI)の測定日から降雨などを考慮してr日後の同指数(CIr)を推定する数理モデルのプロトタイプを構築した。さらに、乳酸菌散布装置の改良と自動化により不要な散布量を最大37%節減することを可能にした。(4)現地実証による地域生産技術では、大麦あとの飼料イネ晩期移植栽培、直播栽培でも多収、高品質を実証した。飼料イネあとは大麦播種までの作業、播種条件、大麦の越冬前の生育、収量に優れることを再確認し、肥効調節型肥料による収量・品質の向上を認めた。飼料イネを使った牛乳のPRには「水田」を意識したものが有効で、知名度の高い「コシヒカリ」等を利用して購入動機を高めることが重要であることを示した。(5)耕畜連携システムの成立条件では、シミュレーション分析に基づき、低コスト飼料イネ生産を実現するための最適作付規模は20ha前後であり、麦・大豆単収が低く、麦・大豆作後の水稲作で「コシヒカリ」の作付けが制約されるケースでは、飼料イネ導入の可能性が高まることを示した。関東地域では、(1)飼料イネを低馬力で細断し、穂先と株元を混合撹拌することで高密度なロールベールを作れる自走式飼料イネ専用収穫機を開発した。収穫したロールベールをラッピングすることで高品質なサイレージを作ることが可能となった。(2)晩生の飼料イネ専用品種「リーフスター」を7月中旬に移植すると、予想通り10月上旬に出穂し、11月上旬に収穫しても刈り遅れにならず、全刈り収量は15.3ロール/10aであり、同営農試験地で作付けされている対照品種「はまさり」の平均全刈り収量13.2ロール/10aを上回ることを示した。(3)茨城県水戸地域において、乳酸菌添加剤の畜草1号添加効果を調べた。畜草1号の添加によって、稲発酵粗飼料のpH値は変わらなかったが、乳酸が増え、酪酸とアンモニアが少なくなった。また、畜草1号添加の有無によって、化学成分組成、栄養価は変わらなかったが、ビタミンE含量が高くなる傾向を認めた。(4)稲発酵粗飼料のTDN(可消化養分総量)の推定においては、OCC(細胞内容物質)、OCW(細胞壁成分)などの酵素分析で求められる変数を取り入れた回帰式(TDN=0.24*OCC+1.07*Oa+35.1、r*2=0.86、Oa:高消化性繊維)が自由度調整寄与率も高く、現時点では実用的であることを示した。(5)稲発酵粗飼料用イネ中のビタミンEの含量は、葉で約1,740mg/kg、茎で約670mg/kg、穂で約260mg/kgで、葉で最も高いこと、その含量は、品種や成熟ステージによって変動し、どのステージにおいても、茎や穂よりも葉で含量が高いことを明らかにした。また、稲発酵粗飼料を全期間給与して肥育した牛肉は、ビタミンEが多く、冷蔵庫に貯蔵中に脂肪の酸化を示すTBARS値と肉色の悪化の指標となるメトミオグロビン割合の増加が抑制されることを明らかにした。(6)購入飼料依存型酪農における現行技術の稲発酵粗飼料の購入上限価格は流通乾草より8円/kgほど低い水準であること、稲発酵粗飼料の利用促進には多給飼養技術の開発が有効であることが分かった。また、飼料イネ栽培農家の所得増加や稲発酵粗飼料の購入価格向上には、畜産農家が堆肥の耕種利用促進を望み、それが購入価格に影響するため、多堆肥栽培技術の確立が有効であることが分かった。購入飼料依存型酪農における現行技術の稲発酵粗飼料の購入上限価格は流通乾草より8円/kgほど低い水準であること、稲発酵粗飼料の利用促進には多給飼養技術の開発が有効であり、所得増加や稲発酵粗飼料の購入価格向上には多堆肥栽培技術の確立が有効であることが分かった。近畿・中国・四国地域では、(1)飼料用稲の鉄コーティング種子湛水直播については、散播および条播による省力栽培を現地で実証し、技術を定着させた。(2)乾田直播については、前年と同様の多収(約1,600g/m2、坪刈り収量、乾物重)を達成するとともに、小型機械を中心とした収穫・調製体系を現地試験地に定着させた。(3)稲発酵粗飼料の多給による乳用種去勢牛の肥育技術については、稲発酵粗飼料の混合割合の異なるTMRを給与した結果、その割合の高い方が発育成績、枝肉成績ともに優れていることを明らかにした。(4)開発技術の普及に向けて技術の経営評価を行うとともに、経営類型ごとに開発中の新技術導入の条件を明らかにした。九州地域では、(1)飼料用稲生産では現地試験により「タポルリ」などの新品種の導入が可能であり、飼料イネ2回刈り栽培では10a当たりの乾物で約2トンを収穫できることを明らかにした。また、現地試験地での農家調査を基に飼料イネ生産を継続する意向を確認できる解析法を開発した。(2)調製技術では、焼酎粕濃縮液を混合した飼料イネ等の発酵TMRは発酵品質が優れており、稲発酵粗飼料に混入した非硬実の水田雑草種子はサイレージ発酵による有機酸の生成とpHの低下により死滅することを明らかにした。(3)焼酎粕濃縮液等のTMR給与では乳用牛と肉用牛の採食性が良く、生理的性状、牛乳の香に影響がないことを明らかにした。4)熊本県酪農経営におけるTMR技術の普及では、動機付けとして食品残さ情報の提供、給与メニューの提示が重要であることを明らかにした。
カテゴリ 病害虫 肥料 稲こうじ病 乾燥 乾田直播 経営管理 コスト 栽培技術 雑草 直播栽培 収穫機 除草 飼料用作物 新技術導入 新品種 水田 抵抗性品種 低コスト 肉牛 乳牛 播種 病害虫防除 品種

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