課題名 | b.地域条件を活かした飼料用稲低コスト生産技術及び乳牛・肉用牛への給与技術の確立 |
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課題番号 | 200709496 |
研究機関名 |
農業・食品産業技術総合研究機構 |
研究分担 |
農業・食品産業技術総合研究機構,東北研,東北飼料イネ研究チーム 農業・食品産業技術総合研究機構,中央研,北陸大規模水田作研究チーム 農業・食品産業技術総合研究機構,中央農業総合研究センター,関東飼料イネ研究チーム 農業・食品産業技術総合研究機構,近農研,中山間耕畜連携・水田輪作研究チーム 農業・食品産業技術総合研究機構,九州研,イネ発酵TMR研究チーム 農業・食品産業技術総合研究機構,畜草研,関東飼料イネ研究チーム |
協力分担関係 |
岩手県農業研究センター 宮城県農業・園芸総合研究所 秋田県農林水産技術センター 山形県農業総合研究センター 秋田県立大学 菅原農園 千葉県畜産総合研究センター 長野県畜産試験場 (株)タカキタ 埼玉県・農林総合研究センター |
研究期間 | 2006-2010 |
年度 | 2007 |
摘要 | 東北地域では、1)東北中北部向け飼料イネ品種「べこごのみ」の無コーティング湛水直播では播種期の気象条件、苗立、黄熟期全乾物収量の安定的確保、収穫時期の観点から5月下旬播種が適することを明らかにした。 「べこごのみ」の湛水直播と乾田直播において、堆肥多量施用の有無、堆肥腐熟度の違いが苗立ち率に及ぼす影響は小さいことを確認した。2)移植栽培において収穫期のタイヌビエ乾物重を0~1g/m2に抑草する水管理と除草剤処理条件を明らかにした。3)試作自走ロールベーラの改良を進め、30a規模の収穫試験の結果、自脱コンバインと自走ロールベーラを用いて予乾収穫する汎用利用体系の収穫コストは専用収穫機体系の65%であることを実証した。4)ロイテリン生産性乳酸菌、グリセロールおよび少量のプロピオン酸ナトリウムを稲発酵粗飼料に接種することにより市販の乳酸菌製剤を上回る高い好気的変敗防止効果を得た。5)予乾収穫体系での過度の予乾処理による稲発酵粗飼料のTDN低下はもみの脱粒によること、および、貯蔵中の家ネズミ類による被害は、ロールの配置法によって軽減できることを明らかにした。さらに、肥育牛において血中ビタミンE濃度を上昇させるには飼料イネを粉砕もみと稲わらの状態で給与するよりも予乾稲発酵粗飼料として給与した方が有効であることを見出した。6)現地営農試験地において、飼料用稲品種混植による、いもち病発生の抑制効果を確認し、また、低コスト直播技術を改良し導入するとともに、完熟堆肥の多量施肥で12.8t/haの黄熟期全乾物収量を得た。その生産費は乾物1kg当たり64円であった。 北陸地域では、1)稲こうじ病の温室内抵抗性評価法の開発と土壌からの稲こうじ病菌DNAの検出限界を明らかにした。2)黄熟期における稈および葉鞘のNSC(非構造性炭水化物)含有率が高く、茎葉部TDN含量が50%以上の品種系統を明らかにした。また、「クサユタカ」と「夢あおば」の直播における、目標苗立基準の下での苗立促進、肥培管理、生育診断からなる栽培管理法を策定した。さらに、不耕起無代かきの湛水水田に播種する省力的な栽培法を現地で実証した。3)WES(米国陸軍水利研究所)が開発した走行の可否判定手法を適用し、降雨による収穫機走行時の地耐力(コーン指数)低下を推定できるモデル式を構築した。また、ロールベール運搬装置の実用化を行い、市販されるとともに、収穫機の損失率、損失内容を明らかにした。4)実収で全乾物収量 1 t/10a 以上の飼料イネ多収生産技術、省力管理による高品質大麦生産技術からなる2年3作生産技術体系を確立した。また、刈取り時期の違いと乳生産との関係を解明し、飼料イネの乳牛への給与技術を確立し、新潟のような水田地帯における飼料イネ利用乳製品の効果的な販売促進方法を提唱した。5)飼料イネと大麦の生産促進のための助成金の目安、飼料イネ専用収穫機のコスト低減の必要性を明確にするとともに、稲WCSを利用する酪農家の経費削減効果について明らかにした。 関東地域では、1)電気柵を利用した飼料イネのストリップグレージングを行うことによって、繁殖放牧牛の採草ロスを3 % に抑制して、10a当たり100CD以上の高い牧養力を確保でき、飼料イネを稲発酵粗飼料に調製して利用する場合と比べて利用コストを5分の1に削減できた。また、稲発酵粗飼料を収穫したほ場周囲で電気柵を利用して繁殖放牧牛に利用させることにより、残飼を10%程度に抑え、稲発酵粗飼料の運搬費を節約できるため慣行より約46%の経費削減が可能であるとともに、家畜飼養の省力化が図られ牛舎施設にゆとりが生じることから繁殖牛生産農家の飼養規模拡大が可能になることを明らかにした。 2)稲発酵粗飼料を肥育の全期間給与した全期間区と肥育の前期と後期に稲発酵粗飼料を給与した前後期区の牛肉は、稲発酵粗飼料を給与しなかった対照区の牛肉に比較して、冷蔵中における脂肪の酸化を示すTBARS値が抑制されることを明らかにした。また、牛肉のビタミンE含量は全期間区>前後期区>対照区であることを明らかにした。さらに、牛肉中のビタミンE含量が多いほど、冷蔵保存13日目のTBARS値とメトミオグロビン割合は抑制されることを示した。一方、うまみ成分であるイノシン酸は子牛の段階から稲発酵粗飼料を給与した牛で多くなった。3)自走式細断型飼料イネ専用収穫機は、収穫ロスが刈り残しの株も含めてほ場生産量の19%であり、コンバイン型専用収穫機の29.7%よりも低く、牧草収穫機体系と変わらないこと、資材・燃料費は牧草収穫機よりも高いもののコンバイン型専用収穫機の73%にまで低減できることを明らかにした。4)食用米の収穫後に飼料イネの収穫・調製作業を行っている稲麦二毛作地帯を対象に品種と移植時期など新たな作型とを組み合わせることによって、収穫適期を拡大する技術を開発した。その結果、6月下旬移植では専用品種の「うしもえ」の導入により黄熟期の幅を10日間拡大でき、7月中旬移植によって収穫適期を10日間拡大できることを明らかにした。 近畿・中国・四国地域では、1)飼料用稲の省力・低コスト生産のための乾田および湛水直播技術、収穫・調製体系、環境保全的施肥技術等に関する「飼料用稲生産技術マニュアル」をとりまとめた。2)稲発酵粗飼料(WCS)の高泌乳牛、乳用種去勢牛への給与技術等に関するマニュアルをとりまとめた。3)耕畜連携システムとして生産組合型、集落営農連携型および広域連携型の3つの営農モデルを策定し、その経済性評価等に関する経営マニュアルをとりまとめた。4)飼料用稲の小型ロールベール収穫・調製体系をえん麦に導入することが可能で、サイレージの発酵品質が概ね良好であることを現地実証において示した。5)泌乳牛に対するWCSを用いた発酵TMR給与実証試験を実施し、購入乾草TMRの給与に比べて、乾物摂取量および乳成分が高く、また、繁殖成績も良好であることを明らかにした。 九州地域では、1)稲発酵粗飼料(WCS)と濃厚飼料を用いたTMRに焼酎粕濃縮液を混合して発酵させた場合、初期の不良発酵が抑制され乾物回収率が向上すること、また、米・麦の焼酎粕濃縮液を乾物比20%まで混合すると、発酵TMRの発酵品質が優れ、開封後の好気的変敗が抑制されることを明らかにした。2)乳用牛の給与時の飼料設計に必要な米、麦およびいも焼酎粕濃縮液の化学組成および栄養価を明らかにした。主な粗たんぱく質源である大豆粕の代替として米焼酎粕濃縮液を飼料中に乾物比で20%まで混合しても短期的には摂取量、乳量および乳質に影響を及ぼさないが、粗たんぱく質としての消化性は低くなることを明らかにした。3)飼料イネ品種「Taporuri」の2回刈り栽培では、穂揃期に1回目を収穫し、黄熟期に2回目を収穫することにより、多収でサイレージ品質も良好なWCSが生産できる。現地実証試験においても 全刈り収量で乾物収量1.9t/10a、推定TDN収量0.9t/10aと極めて高い収量性が確認された。 |
カテゴリ | 病害虫 稲こうじ病 いもち病 馬 乾田直播 規模拡大 経営管理 コスト 栽培技術 収穫機 省力化 除草剤 飼料設計 飼料用作物 水田 施肥 大豆粕 抵抗性 低コスト 肉牛 二毛作 乳牛 播種 繁殖性改善 肥培管理 評価法 品種 水管理 |