a.気候温暖化等環境変動に対応した農業生産管理技術の開発

課題名 a.気候温暖化等環境変動に対応した農業生産管理技術の開発
課題番号 200709536
研究機関名 農業・食品産業技術総合研究機構
研究分担 農業・食品産業技術総合研究機構,北農研,寒地温暖化研究チーム
農業・食品産業技術総合研究機構,東北研,寒冷地温暖化研究チーム
農業・食品産業技術総合研究機構,九州研,暖地温暖化研究チーム
農業・食品産業技術総合研究機構,果樹研,果樹温暖化研究チーム
農業・食品産業技術総合研究機構,果樹研,カンキツグリーニング病研究チーム
農業・食品産業技術総合研究機構,畜草研,畜産温暖化研究チーム
農業・食品産業技術総合研究機構,近農研,暖地温暖化研究チーム
協力分担関係 北海道大学
気象庁
茨城大学
宮城県古川農業試験場
農業環境技術研究所
愛媛大学
広島県農業技術センター
福島県農業総合センター
沖縄県農業研究センター
家畜改良センター熊本牧場
研究期間 2006-2010
年度 2007
摘要 気候温暖化に伴う環境変動については、1)北海道十勝地方では、過去には土壌凍結が発達していたため融雪水の下方浸透が抑制されていたが、土壌凍結が減少した近年は融雪水の浸透が促進され土壌水分移動量が多いことを明らかにした。気象・土壌凍結深データベースを解析し、北海道道東地方・根釧地方内陸部で土壌凍結深の減少傾向を見出した。2)温暖化による気温上昇の評価精度の向上を目的として、都市化影響が僅少な地点における長期気温観測事例を示した。作物の温度反応を調べる実験装置である温度勾配チャンバー内の気温環境を改善するためには入気口前散水が有効であり、戸外気温からの連続的な温度勾配の設定が可能となった。乾燥やクラストによる大豆の出芽遅延がその後の生育に与える影響を明らかにした。3)各AMeDAS観測点での最低気温形成時から最高気温形成時までの気温の時刻変化やその上昇特性を定量的に解析するには、各観測点の時別平均気温をフェルミ・ディラック分布関数によって非線形回帰で近似する手法が有効であることを明らかにした。 気候温暖化がもたらす果樹生産阻害については、1)果実の着色制御機構の解明を進めた。りんごではMdMYBA遺伝子の発現がアントシアニン合成を誘導し、低温処理や紫外線照射処理など着色を促進する処理でその遺伝子発現が増大し、しかもその遺伝子産物がアントシアニジン合成酵素遺伝子のプロモーター領域に結合することから、MdMYBA遺伝子はアントシアニン合成酵素系遺伝子の発現制御を介して着色に重要な役割を果たしていることが示唆された。2)ぶどうのアントシアニン合成に対する糖度、アブシジン酸(ABA)および温度の影響を調べると、糖度の蓄積をもたらす環状剥皮処理によってアントシアニン合成が促進され、遮光や摘葉などの糖度を低下させる処理抑制されること、さらに、ベレーゾン(水まわり期)開始前から収穫までの期間に果房温度を低くすると、着色開始期のABA含量が増加して着色が改善されることを明らかにした。以上の結果から、ぶどうの着色には果粒糖度、ABA、および果房温度が密接に関連することが示唆された。3)ほ場でのりんごの着色能力の比較検討を行い、恒温器を利用した簡易着色評価法の実用性を示すとともに、着色能力が未知の品種を評価する際に参考となる25℃条件における着色能力別の基準品種を主要品種の中から選定した。4)気候温暖化が落葉果樹の休眠や開花に及ぼす影響を推測するため、日本なし、さくらおよびももの休眠・開花予測モデルを作成した。実際にもものモデルを用いて茨城県と鹿児島県で温暖化による開花予測を行い、茨城県では平年に比べ5℃、鹿児島県で1.5℃上昇すると開花が遅延するとの予測結果を得た。 5)スペルミジン合成酵素遺伝子を導入した西洋なしの組換え体では、塩やマンニトールのストレスに対して非組換え体よりも高い抵抗性を示すが、これは非組換え体に比べてスペルミジン含有量および抗酸化酵素活性が高くなったことに起因することが示唆された。6)果樹園の栽培管理に由来する亜酸化窒素の発生フラックスは夏期の高温時に高く、冬期に低くなった。草生栽培では、刈り倒し後に発生ピークが生じ、年間の累積フラックスも大きくなった。また、亜酸化窒素発生フラックスは施肥直後に一時的に増大するが、緩効性肥料を利用した場合には、その発生は低減することが観察された。7)気温の上昇に伴いかんきつの生理落果は助長されるが、葉果比が大きい樹(新梢がほどよく発生している樹)ほど生理落果は軽減される傾向にあった。 カンキツグリーニング病については、1)媒介昆虫のミカンキジラミは、指宿市のゲッキツ樹上で越冬し、次世代を産出することを確認した。ミカンキジラミの耐寒性等を解析し、現在の生息可能域(薩摩半島と大隅半島の南部海岸と日南海岸)および気温上昇時の拡大域を推定した。2)病原細菌は保毒穂木中において5℃では3ヶ月間、2℃で2ヶ月間生存した。このことから、九州本土南部ではこの細菌は越冬可能であると示唆された。3)ミカンキジラミによるカンキツグリ-ニング病の伝搬実験系を開発した。浸透性殺虫剤による発生防止効果解析のため、遺伝子マーカーによる個体群識別法の開発に着手した。4)病原細菌ゲノムが全DNAに比べて100~1000倍濃縮されたDNA画分を精製し、新規ゲノムクローンを得た。5)罹病葉と健全葉において、ミカンキジラミ成虫の生存期間に差は認められなかった。6)「沢田いよかん」と「福岡在来すだち」におけるカンキツグリーニング病抵抗性の検定結果は、供試樹やPCRプライマーの種類によって異なり、安定しないことが判明した。7)植物体を磨砕しないでDNAを抽出し、LAMP法により60分で病原細菌の有無を検出できる診断法を開発した。また、AzurB色素を0.1%含有した熱応答性マイクロカプセルとDNA溶液を加熱することにより、目視でDNA検出が可能であることを確認した。 玄米の品質に及ぼす温暖化の影響については、1)胴割れ米発生程度の違いには玄米窒素条件が関与する可能性を示すとともに、第7染色体上に、胴割れ発生に関連した量的形質遺伝子座の座乗位置を特定した。2)水稲品種「にこまる」では、「ヒノヒカリ」に比べ高温・寡照条件においても登熟が良好となり、多収となる。その要因の一つとして、穂揃期の茎の非構造性炭水化物(NSC)が「にこまる」で多く、登熟期にはこの炭水化物が穂へ転流することがあげられた。また、出穂前後の高温多照条件での少量継続施肥では、穂揃期のNSC含量・収量・品質は慣行2回施肥と同等であった。3)九州北部水田における稲わら堆肥や稲わら、麦わらの有機物連用は、通常の年だけでなく高温年、低温年でも水稲に対する増収効果が高く、特に稲わら堆肥での効果が大きいことを明らかにした。 暖地性害虫類の北上予測等については、1)フェロモントラップ脇にキャベツ株を設置すると、コナガ雄成虫の捕殺虫数が増加することから、カイロモンはトラップの捕獲効率を上昇させることが示唆された。2)新たに発生した病害として、ライグラスピシウム病およびオーチャードグラス夏斑点病を確認し、病原菌を同定した。また、ライグラスいもち病の発生予測簡易シミュレーションを行いて、3℃の気温上昇によって本病は東北のほぼ全域で発生するものと推定された。 3)エンドファイト感染イタリアンライグラスはムギダニ抵抗性がないこと、昆虫毒性とされるロリンとペラミンはムギダニの生育や摂食選好性に影響しないことを明らかにした。 温度やCO2濃度の上昇に伴う気象生態反応の解明とモデル化については、1)水稲は6~7葉期以降に日長感応と気温感応を開始し、短日下では日長感応が優先し気温感応が抑制され、長日下では気温感応が顕著になることを明らかにした。2)高濃度CO2と水温上昇による水稲の乾物重増加促進効果は、生育初期に大きく生育ステージが進むと低下すること、水温上昇により地力窒素発現量が増加することを示した。3)高濃度CO2下では、稲のケイ酸吸収機能が低下し、さらにいもち病感受性を左右するケイ酸含量が減少することを明らかにした。4)稲の根域冷却による吸水量の減少が、根のアクアポリン活性の低下によって生じることを明らかにした。また、稲幼苗葉の低気温障害は、高い地温条件下で助長され、光化学系IとIIの間の電子伝達が阻害されること、さらに、障害発生には硝酸イオンが関与することを明らかにした。5)水田からのメタン放出量が30~50%増加することを明らかにした。6)オーチャードグラス高耐暑性品種の育成については、選抜が進むほど多収となり、越夏性が向上した。 畜産への影響については、1)初産牛において体温が上昇し、血漿中の還元因子であるビタミンC濃度が低下する夏期高温環境下では、泌乳量と乳たんぱく質、乳糖、無脂固形分分泌量は血漿中ビタミンC濃度と正の相関関係があることを明らかにした。2)受精及び初期発生の場としての卵管・子宮内の環境について、夏季の気温上昇に伴い、還元物質であるグルチタオンおよび活性酸素除去酵素であるスーパーオキシドジスムターゼ活性が低下し、酸化還元環境が悪化することを明らかにした。また、胚の着床の場である子宮内では、胚-子宮の妊娠認識に重要な役割を果たす上皮細胞の生存率が気温上昇に伴い低下することを明らかにした。3)タンニンを飼料に添加することで反すう家畜からのメタン産生が抑制できた。また、暑熱条件下での栄養素利用性やたんぱく質の蓄積量向上のための基礎的な知見を得た。4)自然暑熱環境下において、豚にアミノ酸を要求量の30%増で給与すると日増体量が増加したが、15%増の給与では日増大量は改善しなかった。5)農林水産計算センターのバーチャルラボにサーバーを開設し、畜産インベントリーデータベースのプロトタイプを作成した。 温室効果ガス発生等に関しては、1)田植え期における田面水の溶存CO2移動の解析結果をもとに土壌呼吸速度を推定し、田面水の対流による土壌呼吸の促進を示唆する結果を得た。2)慣行耕起、省耕起、不耕起を行う小麦転換畑ほ場での温室効果ガス発生量モニタリングから、麦わら残さのすき込みおよび分解促進のための窒素添加は亜酸化窒素発生量を増加させることを見出した。3)牛ふん堆肥や作物残さを8通りの耕起法・投入量ですき込み、亜酸化窒素発生を測定した。その結果、スイートコーン残さのプラウすき込みにより大量の亜酸化窒素が発生し、深い位置への収穫残さすき込みは亜酸化窒素発生を促進することを明らかにした。4)湿原での蒸発散速度測定に適したコンテナを用いるライシメーター法を開発し、美唄湿原のミズゴケ群落は、ササ群落に比べ蒸発散量が多いことを見出した。
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