k.地域条件を活かした高生産性水田・畑輪作のキーテクノロジーの開発と現地実証に基づく輪作体系の確立

課題名 k.地域条件を活かした高生産性水田・畑輪作のキーテクノロジーの開発と現地実証に基づく輪作体系の確立
課題番号 200709493
研究機関名 農業・食品産業技術総合研究機構
研究分担 農業・食品産業技術総合研究機構,北農研,北海道水田輪作研究チーム
農業・食品産業技術総合研究機構,北農研,北海道畑輪作研究チーム
農業・食品産業技術総合研究機構,東北研,東北水田輪作研究チーム
農業・食品産業技術総合研究機構,中央研,北陸水田輪作研究チーム
農業・食品産業技術総合研究機構,中央研,北陸大規模水田作研究チーム
農業・食品産業技術総合研究機構,中央研,関東東海水田輪作研究チーム
農業・食品産業技術総合研究機構,近農研,中山間耕畜連携・水田輪作研究チーム
農業・食品産業技術総合研究機構,九州研,九州水田輪作研究チーム
農業・食品産業技術総合研究機構,九州研,九州畑輪作研究チーム
協力分担関係 北海道立中央農業試験場
新潟県農業総合研究所
茨城農業総合センター
広島県立総合技術研究所
佐賀県農業試験研究センター
福岡県農業総合試験場
長崎県総合農林試験場
兵庫県立農林水産技術総合センター
宮崎県総合農業試験場
佐賀大学
研究期間 2006-2010
年度 2007
摘要 水田輪作について、 北海道地域では、1)北海道における、水稲直播栽培と野菜作による収益性の高い水田営農システムの構築を目指して、良食味米産地である上川中部および北空知を対象に地域農業確立総合研究を開始し、乾田直播および短節間かぼちゃの実証栽培を行った。実証地の当麻町では、直播研究会の活動や農協による播種作業受託が直播栽培の定着に寄与しており、生産者は中長期的な規模拡大の進展とともに水稲直播栽培を拡大する意向が強く、直播による減収については経営トータルの観点から許容していた。2)散播方式の春まき小麦初冬まき栽培における種子消毒剤アゾキシストロビン剤処理による越冬個体率改善効果について、普及地帯における現地試験で確認した。砕土ディスク付きチゼルプラウシーダを用いると、従来の表面散播に比べて種子の地表面露出割合が少なく、越冬個体率が向上した。越冬個体数が少ない場合は施肥量を少なくすることにより、子実たんぱく質含有率を適正化することが可能であった。3)GPSとジャイロ、パソコン等で構成されるGPSトラクタガイダンスシステムを開発・市販化し、耕起、播種、防除等の各種作業への適応性を確認した。また、本システムを応用した自律走行では、横方向変異で最大10cm以内の直線作業が可能であった。4)田畑輪換水田土壌について強熱減量を測定することにより可給態窒素を精度良く推定する方法を開発した。本推定法は、腐植含量の多い火山灰土壌や褐色低地土についても適用が可能であった。 東北地域では、1)有芯部分耕栽培により大豆の開花期までの生育量が増加すること、さらにはロータリーにチゼルを取り付け改良した2種の有芯部分耕播種機は、従来機よりPTOの所要動力が低く、作業能率が高いことを確認した。また、PCRによるダイズ紫斑病の薬剤耐性菌の同時検出法を開発するとともに、大豆紫斑病の発生が倒伏と開花~収穫時期の降雨日数の増加で多発する傾向があることを明らかにした。2)現地試験で、直播適性の高い水稲品種「萌えみのり」の鉄コーティング種子を湛水高密度で表面散播すると、無倒伏で、良品質・多収(全刈収量650kg/10a)となることを実証するとともに、湛水直播の水稲と大豆の有芯部分耕栽培の組合せで、生産コストを30~40%削減できることを示した。麦用のグレーンドリルを汎用利用した水稲の乾田直播の播種体系を開発し、現地で実証するとともに、前作大豆の灰色低地土のほ場では、カルチパッカ鎮圧により苗立ち率が向上することを確認した。保湿加温処理種子と深夜給水による苗立ち率や生育収量の向上効果は明瞭でなかった。水稲の箱なし苗については、プール育苗と育苗ハウスの被覆方法を検討し、慣行並みの生育となる条件を示した。東北地域での連絡試験から、水稲直播による米粒外観品質の向上とその要因を明らかにした。3)東北地域における大豆作の特徴を品目横断的経営安定対策への対応等から整理し、水田輪作に大豆を導入した先進事例の調査により、大豆導入には、他の輪作作物への効果、大豆の契約栽培による高品質生産へのインセンティブが重要であることを明らかにした。4)寒冷地水田における水稲による完熟堆肥窒素の吸収量には年次間で大きな変化がみられず、施用された堆肥窒素の約7割以上が5作後の土壌に残存することを明らかにした。 北陸地域では、1)作期前進化に向けたえだまめの直播栽培において、A品収量は、緩効性肥料を施用した緑もしくは黒マルチ区で高くなった。えだまめの生育予測については、子実肥大始期でステージを2分することによるDVRモデルの予測精度の向上は確認できなかった。2)改良型の畝立て用ロータリ4機種を開発し、市販化された。大豆の畝立て密植栽培では、増収が確認され、えだまめでは、耕うん同時畝立て+マルチ同時直播作業技術が可能となった。耕うん同時畝立て作業機汎用利用によるえだまめ直播の作期前進技術はマルチ移植栽培より省力性が高く、春作業時期では10a当たり投下労働時間は約1/3以下となった。また、耕うん同時畝立て播種作業機を大豆、そば、麦、野菜に適応し、現地約127ha、44ヵ所で実証試験を実施した。耕うん同時畝立て播種作業機は、出前技術指導を積極的に行った結果、北陸、東北を中心に全国で1,000ha以上に普及しているものと推定される。3)縦型暗渠を用いた小排水溝やもみ殻暗渠と本暗渠との連結は顕著な排水改善効果を示し、前者の場合、冬期間排水のほとんどみられない暗渠でも降水量の約40%を排水可能となることを明らかにした。4)日本産茎疫病菌67菌株を大豆に接種した結果、侵害可能な抵抗性遺伝子型は48パターンに分かれた。茎疫病菌79菌株を新たに収集するとともに、リアルタイムPCR法でダイズ茎疫病菌を特異的に検出するプライマー・プローブを設計した。富山市と上越市のウコンノメイガ雌のフェロモン腺抽出物からE16-ヘキセデセナールとZ10-ヘキセデセナールが確認されたが、成分比はほとんど変わらなかった。5)畝立て狭畦密植栽培において側条施肥では早期に生育量が確保されるが、後期の生育が全層より劣り、全層施肥の方が収量は高くなった。肥料3要素・石灰を無施用で大豆を連作すると縮緬じわが多発するが、石灰を施用しpHを改善することによりしわ粒発生が軽減されることを確認した。ホウ素などの微量元素潜在欠乏土壌でも微量要素複合肥料の施用により、しわ粒率が低下することを明らかにした。 北陸地域の大規模水田においては、1)水稲直播の出芽・苗立ち、初期生育には、気温日較差が関係することを明らかにした。また、乾もみ鉄コーティングに比較して催芽もみ鉄コーティングでは、低温条件で出芽が早まって苗立ちを確保しやすいことを明らかにした。2)水稲高速直播用のエアーアシスト播種機の播種精度を上げるため、安価なGPS単独測位の機種を用いる播種機制御技術を開発した。3)カメラ付携帯電話を用いた作物の植被率の計測システムを開発した。画像を送信するとメールクライアント型画像処理プログラムにより処理され植被率が計測される。4)収穫情報を一元管理するための素材技術として、無線によりコンバインからの収量情報を収集する装置を試作し、半径400m内で稼動するコンバインの情報を管理できることを確認した。収集したデータの簡易な地図表示についても見通しを得た。 関東・東海地域においては、1)小麦の不耕起播種栽培では、肥料の播種溝施用、特にリン酸の接触施用により初期生育が促進され、穂数が増えて収量も増加する可能性を明らかにした。2)大豆不耕起栽培における苗立ち不良の主要因を明らかにするため、現地ほ場試験を実施した結果、不耕起播種条件では茎疫病による苗立ち不良が著しく、その被害は基肥施用で助長されることが明らかとなった。3)携帯型GPSによる農作業履歴の自動収集システムを開発した。携帯型GPSと新たに開発した電源ユニットを用いることで、農業機械の作業軌跡データの自動収集が可能である。また、農作業履歴記録支援ソフトウェアにより農業機械の軌跡データとほ場ポリゴン地図から農作業が実施されたほ場を自動判定できる。4)水稲跡の小麦の小明渠浅耕播種栽培では生育収量が低下する事例が認められ、ほ場によっては前処理耕うんや深く耕うんする等の作業方法を検討する必要があることを明らかにした。また、水田転換畑において大豆・小麦を小明渠浅耕播種により連続浅耕栽培することで、浅耕部分の全炭素、全窒素含有率、交換性カリ、有効態リン酸含量等の理化学性が肥沃化の方向に変化することを明らかにした。5)作溝用ディスクの破損の要因になるけん引抵抗を現行の2~4割低減できる作溝用ディスクの最適取付角度を明らかにするとともに、汎用播種化と高速作業化を可能にする小明渠浅耕播種機の耕うん機構の開発に着手した。 近畿・中国・四国地域においては、1)部分的に軟弱なほ場の大豆不耕起栽培において、タイヤを避けるように播種ユニットを調整した結果、タイヤの轍に隣接する条でも大豆の苗立ち率は低下しなかった。2)大麦用に改良した不耕起播種機を使って水稲跡の大麦部分耕播種を行った結果、播種精度や出芽は良好で、全刈収量は494kg/10aであった。3)鉄コーティング水稲種子を大量かつ安定的に製造する技術を開発した。3日間の作業で、乾もみ重で300kgまでの処理が可能である。また、鉄コーティング水稲種子上のもみ枯細菌病菌、苗立枯細菌病菌、褐条病菌の菌数が減少すること、鉄コーティング種子直播後のばか苗病の発病が減少することを確認した。4)大豆について、ダイズ葉腐病菌が生育後期の葉腐れ症状のみならず出芽および初期生育にも影響を与えること、カメムシの青立ち発生に及ぼす影響、開花期以降の土壌乾燥が生育量に及ぼす影響を明らかにした。5)中山間地域の集落営農法人における麦・大豆作の経営的な導入条件として、10%程度の低コスト化を可能とする不耕起栽培技術の導入と、大麦で320kg/10a、大豆で240kg/10a程度の収量を目標とする必要があることを示した。 九州地域では、1)湛水土壌中の水稲の苗立ちは温度上昇で阻害される一方、生育速度は温度上昇で速まるが、極端な高温ではアレニウス式に従わないこと、土壌の還元化は温度によって促進され、アレニウス式に従うことを明らかにした。2)大豆の種子調湿については外気温度の影響が少ない新たな装置を開発し特許を出願した。現地試験により山形鎮圧輪等の技術の有用性を確認した。播種作業については耐天候型一工程播種の大豆作での有効性と、麦作への適応の可能性を確認した。3)現地農家ほ場で稲-麦-大豆体系に比べ麦-大豆二毛作体系の大豆収量が低い要因として、土壌pHが低いことやMg/K比が基準値以下であることが一因と推察された。4)水田に隣接するイネ科牧草ほ場の多くで確認されたいもち病菌を解析したところ、稲に病原性を持つ菌株は得られずDNA解析結果も異なったことから、牧草類に発生しているいもち病菌は稲分離菌とは遺伝的に異なるものが多いと判断された。5)スクミリンゴガイは低温順化や乾燥により越冬前に耐寒性を増強すること、また 耐寒性上昇時に体内にグリセロールを蓄積することを明らかにした。また、銅粉粒子 を10?m程度に微細化し塗布することによって、スクミリンゴガイの産卵防止効果が高まることを現地試験において確認した。 6)帰化アサガオ類の暖地大豆畑への侵入および収穫物への種子の混入においては、アメリカアサガオとホシアサガオの頻度が高いことを明らかにするとともに、アゼガヤは発生後の初期段階で水没した場合に極端に生育が抑制されること、シハロホップブチルによるアゼガヤの殺草限界は粒剤で草丈15cm、乳剤では草丈20cm以上であることを示した。 畑輪作について、 北海道では、1)大規模経営体向けにキャベツ収穫機・大型容器輸送を利用した加工用途向け高能率収穫・流通システムを提示し、新たに開発された2条収穫機の導入指針を作成した。2)大豆生育期の除草については、「土壌処理-ベンタゾン散布-機械除草」の体系が、シロザやタニソバを含む広葉雑草全般に有効であり、省力的な除草技術として実用可能であることを明らかにした。3)えん麦野生種は、キタネグサレセンチュウ個体群の寄主親和性に関わらず、安定した高い線虫抑制効果を示した。一方で、裸地休耕後の線虫数に個体群間差異が見られ、個体群によっては休耕・非寄主作物の導入のみで一定の密度低減効果が期待できることが分かった。4)生物農薬開発に資するため、ハモグリバエ科害虫やハモグリバエ類の寄生蜂の種類と発生消長を調べた結果、3科11種のアシグロハモグリバエ寄生蜂が確認された。また、生物農薬として販売されているハモグリコマユバチにとってアシグロハモグリバエが好適な寄主であることを確認した。5)畑輪作体系の大幅な省力化と約4割の低コスト化を目的として、作業受託組織を利用した大型高能率機械の効率的利用、てん菜の簡易耕起直播栽培、省力的な総合雑草防除、薬剤使用量削減などの技術開発を開始した。 九州地域では、1)だいこん-甘しょ体系でだいこん作付前に標準施肥量以上を全層施用した場合、だいこん収穫後の畦部分のみを耕うんし、再成形した畦に甘しょ「コガネセンガン」を栽培すると、全面耕うん後畦立てと比較して同等以上の全いも収量・品質が得られた。このことより、甘しょの部分耕畦再成形栽培が可能であることを確認した。2)大型セルトレイに切断種イモを植え付ける方法による甘しょの大量苗生産技術の開発に着手し、種イモの質量は「コガネセンガン」の場合80g以下が望ましいことを明らかにした。2分割の種イモは消毒等の処理をしなくても高い確率で萌芽し、生産性も優れている。また、比較的小さい苗でも慣行挿苗に見劣りしない収量を得ることができた。3)トラクタ直装型さといも用培土機を開発した。本機は22kW級のトラクタに装着し、さといもの畦間を走行して培土作業を行う。3種類のロータリ爪の組合せと面積を広げた半円筒形の培土カバー、および茎を畦中央部に傾ける分草桿により2回の培土で畦中央部でも15cmの培土が可能である。
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