タイトル | 炊飯後の褐変程度が小さく穂発芽性が改良されたもち性二条大麦新品種「きぬもち二条」 |
---|---|
担当機関 | (国)農業・食品産業技術総合研究機構 九沖研 |
研究期間 | 2009~2021 |
研究担当者 |
平将人 谷中美貴子 中田克 中村和弘 松中仁 境哲文 杉田知彦 塔野岡卓司 西尾善太 河田尚之 荒木均 藤田雅也 八田浩一 久保堅司 |
発行年度 | 2021 |
要約 | 「きぬもち二条」はプロアントシアニジンフリー遺伝子(ant28)を持つ皮性のもち性二条大麦で、炊飯後の褐変程度は小さく、穂発芽性は"やや難"で穂発芽しにくい。「くすもち二条」と比べて、整粒収量は同程度で、容積重は重く、精麦白度は高い。 |
キーワード | オオムギ、もち性、プロアントシアニジンフリー、穂発芽性、容積重、精麦白度 |
背景・ねらい | 九州では皮性のもち性二条大麦品種「くすもち二条」の普及が進んでいる。「くすもち二条」は精麦および炊飯麦の黄色みが強く、他のもち性品種との区別性を活かした製品が販売されているが、他の非プロアントシアニジンフリー品種と同様に炊飯後の褐変程度が大きい。もち性大麦の一層の普及拡大を図るためには、「くすもち二条」に加えて、炊飯後の褐変程度が小さくなるプロアントシアニジンフリー遺伝子(ant28)を導入したもち性大麦品種の育成が有効と考えられる。これまでにant28遺伝子を導入して育成されたもち性品種はいずれも穂発芽しやすいことから、穂発芽しにくい皮性のうるち性二条大麦品種「はるか二条」に、ant28遺伝子およびもち性遺伝子を導入した品種を育成する。 |
成果の内容・特徴 | 1. 「きぬもち二条」(旧系統名:「西海皮糯77号」)は、ant28遺伝子およびもち性遺伝子(アミロースフリータイプ)を持つ「四国裸糯119号」(のちの「キラリモチ」)を1回親、「西海皮69号」(のちの「はるか二条」)を反復親として、2010年度に1回目の、2011年度に2回目の戻し交配を行い、系統育種法により育成された皮性のもち性二条大麦である。 2. 「くすもち二条」と比べて、出穂期は2日早く、成熟期は同程度である(表1)。 3. 「くすもち二条」と比べて、稈長、穂長および倒伏程度は同程度で、穂数はわずかに少ないが、整粒歩合は高く、整粒収量は同程度である(表1)。 4. 「くすもち二条」と比べて、容積重は重く、千粒重は同程度である(表1)。 5. 秋播性程度は「くすもち二条」と同じ"I"である。穂発芽性は"やや難"で、「くすもち二条」より優れる(表2)。オオムギ縞萎縮病抵抗性、オオムギ萎縮病抵抗性およびうどんこ病抵抗性は"極強"、赤かび病抵抗性は"中"で、いずれも「くすもち二条」と同程度である(表2)。 6. 「くすもち二条」と比べて、搗精時間は長く、砕粒率は同程度で、精麦白度は高い(表3)。 7. β-グルカン含量は玄麦、精麦のいずれも「くすもち二条」と同程度である(表3)。 8. 炊飯後の褐変の原因となるプロアントシアニジン含量は、玄麦、精麦のいずれも「くすもち二条」と比べて極めて少なく、「キラリモチ」と同程度である(表3)。 9. 「くすもち二条」と比べて、炊飯麦の色相は、炊飯直後は明るく、赤みは同程度で、黄色みは弱い(表3)。また、70°Cで保温した炊飯翌日はかなり明るく、赤みはかなり弱く、黄色みは弱い(表3)。炊飯後の褐変程度は「くすもち二条」より小さく、「キラリモチ」と同程度である(図1)。 |
成果の活用面・留意点 | 1. 普及対象:大麦生産者および実需者。 2. 普及予定地域・普及予定面積:栽培適地は暖地および温暖地の平坦地。2020年播きから佐賀県で試験栽培が行われ、需要動向を踏まえた上で2022年播き以降に20haの作付けが行われる予定。 |
図表1 | ![]() |
研究内容 | https://www.naro.go.jp/project/results/5th_laboratory/karc/2021/21_011.html |
カテゴリ | 育種 萎縮病 うどんこ病 大麦 新品種 抵抗性 品種 |