k.地域条件を活かした高生産性水田・畑輪作のキーテクノロジーの開発と現地実証に基づく輪作体系の確立

課題名 k.地域条件を活かした高生産性水田・畑輪作のキーテクノロジーの開発と現地実証に基づく輪作体系の確立
課題番号 2008010577
研究機関名 農業・食品産業技術総合研究機構
研究分担 (独)農業・食品産業技術総合研究機構,北農研,北海道水田輪作研究チーム
(独)農業・食品産業技術総合研究機構,東北研,東北水田輪作研究チーム
(独)農業・食品産業技術総合研究機構,中央研,関東東海水田輪作研究チーム
(独)農業・食品産業技術総合研究機構,中央研,北陸水田輪作研究チーム
(独)農業・食品産業技術総合研究機構,中央研,北陸大規模水田作研究チーム
(独)農業・食品産業技術総合研究機構,近農研,中山間耕畜連携・水田輪作研究チーム
(独)農業・食品産業技術総合研究機構,九州研,九州水田輪作研究チーム
(独)農業・食品産業技術総合研究機構,北農研,北海道畑輪作研究チーム
(独)農業・食品産業技術総合研究機構,九州研,九州畑輪作研究チーム
協力分担関係 新潟県農業総合研究所
富山県農林水産総合技術センター
鳥取県農林総合研究所農業試験場
福井県農業試験場
秋田県農林水産技術センター
佐賀大学
防災科学技術研究所
茨城農業総合センター
北海道大学
北海道立中央農業試験場
研究期間 2006-2010
年度 2008
摘要 地域の条件を活かした高生産性水田輪作体系を確立するため、 最適耕起・播種技術を基軸とする効率的な施肥・除草・防除技術について、 北海道地域では、1)ほ場面を傾斜均平し、クローラトラクタ等の走行による転圧および明渠の作溝を組み合わせたほ場では、明渠のみ作溝したほ場よりも根雪消雪後の表層体積含水率が2割程度低く、土壌硬度も1.4~2.4倍高いことから、融雪後の作業開始時期は約10日早まり、農作業機械の走行性も高いことを明らかにした。2)混合貯留乾燥装置において大豆に水分吸収剤として小麦を混ぜ合わせる際に、目標仕上げ水分になるように両者の混合比を自動的に制御する装置を開発した。混合貯留乾燥装置を使用すると従来の火力乾燥よりも灯油および電力の使用量を35%以上削減できることを示した。 東北地域では、1)大豆の有芯部分耕栽培では、チゼル爪を改良することにより、砕土率70%以上を保ちつつ0.7~1.1m/sの高速度での作業を可能とした。また、有芯部分耕による大豆の増収効果は、慣行栽培で湿害症状が現れたほ場においてのみ明確に認められた。 北陸地域では、1)耕うん同時畝立て作業機を改良し、麦、大豆密植用の平高畝に適する耕うん幅220cmの新機種を市販化した。飼料用とうもろこしでは、地下水位が収量に影響し、湿害により収量の低いほ場ほど畝立ての効果が高いことを認めた。2)本暗渠にもみ殻暗渠と縦型暗渠を組み合わせた排水システムは、施工後2年目においても高い排水性を示し、大豆栽培期間中(総雨量614mm)の排水量は、縦型暗渠無施工ほ場の約2倍程度の216.3mmであった。3)日本産茎疫病菌109菌株の病原性パターンは59に分かれた。大豆品種のうち、日本産菌の40%以上に有効な抵抗性遺伝子のいずれかを持つ9品種と、109菌株に全く抵抗性を示さなかった1品種の計10品種を利用することにより、本病原菌のレースを判別できるものと考えられた。 関東・東海地域では、1)小麦の不耕起播種栽培において肥料の一部又は肥効調節型肥料を播種溝に施用することで初期生育が促進され、播種3カ月後の地上部乾物重は30%程度増加した。2)水稲跡の小麦-大豆作に小明渠浅耕播種を連続して適用する場合は、小麦播種前に前処理耕うんを行うことにより小麦と大豆の収量が安定化することを明らかにした。小明渠浅耕播種の汎用化と作業の高速化に有効な浅耕鎮圧播種方式を開発した。本方式では、干ばつ時における大豆の出芽率が10%程度向上し、播種作業の速度を1.0m/sとすることが可能となる。3)小明渠ネットワークを配置したほ場かん水では、畝間かん水に比べて水の移動速度が2割程度速く、かん水むらも少なくなることを明らかにした。4)大豆の茎疫病による枯死株発生は施肥によって増大し、かつ大豆の子実収量に対する施肥の効果は小さいことから、「納豆小粒」の不耕起播種栽培では基肥施肥は不要であることを明らかにした。 近畿・中国・四国地域では、1)大麦跡の大豆不耕起播種作業における覆土性能向上を図るために爪を改良した近農研式不耕起播種機の部分耕型においても、播種精度、生育・収量は従来の溝切り型とほぼ同等であることを示した。高速播種(0.9m/s)における不耕起播種機の播種精度を向上させるには、接地輪に及ぼすほ場条件(土質、水分、夾雑物等)の影響を制御する必要があることを明らかにした。2)地下かんがいを用いた大豆栽培では、梅雨明け後の播種においても播種前に地下水位を一度上げることで出芽が安定し、収量が確保されるなど(「サチユタカ」で24.7~31.3kg/a)、播種適期を拡大できる可能性を示した。3)大豆では、マルカメムシの加害により開花期の主茎長、総葉数、総節数が減少するが、各形質で有意な被害が生じる個体密度は第2本葉期でそれぞれ40、80、100成虫/株以上とかなり高いことから、本種の防除は通常は不要と考えられた。一方、ホソヘリカメムシによる大豆の登熟遅延(激しい場合には青立ちとなる)は、4齢以上の幼虫の加害で発生し、青立ち防止には子実肥大初期の防除が有効であることを示した。 九州地域では、1)大豆の播種直後における湿害を回避し、出芽・苗立率の向上を図るため、大豆種子を簡便・安定的に加湿する装置を開発した。本装置は、冷却した加湿空気を循環させることにより、種子の含水率を24時間で10%から15%まで高めることができる。2)大豆ほ場の侵入雑草であるアサガオ類の種子は、傷つけ処理後に湛水土中に貯蔵することで死滅すること、大豆播種後30日目以降に発生するホシアサガオとヒロハフウリンホオズキの生育は大豆との競合によって著しく抑制されるため、除草が必要となる期間は播種から30日間であることを明らかにした。 水田輪作に適する野菜の栽培管理技術については、1)耕うん同時うね立て作業機の爪のうち1本の方向を変えたえだまめ用のマルチ直播作業機を開発し、現地で実証した。大規模水田作経営において、作期を前進させることなどによりえだまめを新規に導入する場合、作付面積が1ha以上、市場単価900円/kg以上であれば一定の純収益を確保できることを明らかにした。マルチ直播栽培技術や生育予測手法等の開発技術と経営評価を取りまとめ、えだまめの栽培マニュアルとして公表した。 直播水稲の生育安定化技術、超省力化技術等の開発について、 北海道地域では、1)水稲の乾田直播栽培において、酸素発生剤の無粉衣種子を播種して、苗立ち始めまで間断かんがいを行うと、慣行の水管理を行った場合に比べて苗立ち率が16%向上し、収量はやや高まることを示した。また、播種時の種子間距離が狭いほど種子近傍が還元状態になり、2cm以下では苗立ち率が低下することを明らかにするとともに、ドリルシーダを広幅播きに改良して種子間の競合を緩和することで苗立ち率が5%向上することを示した。 東北地域では、1)水稲の湛水高密度散播直播栽培では、密封式鉄コーティングを処理した種子は、従来の鉄コーティング種子より初期生育が良いこと、還元土壌で発生する二価鉄による出芽阻害には品種間差が存在すること、移植栽培に比べ葉いもちの発生量は多くなる傾向にあることを明らかにした。2)グレーンドリルを活用した水稲乾田直播栽培では漏水防止対策が重要であり、ハローパッカおよびカルチパッカによる強鎮圧と畦畔際代かきを組み合わせることで、日減水深が2cm以下になることを大豆跡を含む現地ほ場で実証した。3)多収水稲品種「べこあおば」について、7年間平均で920kg/10aという超多収を達成した。 北陸地域では、1)エアーアシスト条播機で直播した水稲種子の播種形状、播種深と土壌表面硬度との関係を明確にした。また、鉄コーティング種子ではエアーアシスト効果を調節し、播種深を土壌表面近くに保つことにより生育・収量が向上することを示すとともに、CaO2コーティング種子では代かき同時土中点播と同等以上の収量が得られることを現地で実証した。2)直播水稲の出芽・苗立ちと初期生育は温度を変数としたアレニウス式によって近似され、平均気温が同じ場合、種子コーティング材が異なっても昼温が高い方が良好であることを明らかにした。3)センサネットワークに対応した収量センシング手法では、コンバインタンク内における穀粒の不均一拡散が誤差を生じる要因であり、センサ配置の改善が必要なことを明らかにした。既開発のほ場収量計測システムを農業生産法人に導入し、生産者が適切に機器を管理し、運用できることを実証した。 近畿・四国・中国地域では、1)広島県中山間地の育苗センターにおいて鉄コーティング種子の大量製造を実施し、実用性を確認した。大量製造された鉄コーティング種子は、ビニール袋に入れておけば室温でも1年以上保存できることを検証した。また、種子重量に対して0.1倍および0.5倍の鉄をコーティング処理すると、育苗期のいもち病や直播栽培時に発生するばか苗病が抑制されることを明らかにした。 九州地域では、1)水稲湛水直播栽培における出芽・苗立の向上に向けて、スクミリンゴガイの生態特性を調査し、越冬貝の耐寒性は、湛水条件において水温が25℃では4日間、20℃では8日間でそれぞれ消失すること、湿潤条件では水温が25℃でも完全には消失しないことを明らかにした。2)水稲乾田直播栽培を導入可能なほ場条件を明らかにするため、負圧浸入計を用いて透水性を測定した結果、二毛作ほ場では耕盤に粗大間隙が多く湛水状態を維持するのは困難であるのに対し、一毛作ほ場では粗大間隙が少なく、粘土質の土壌であれば耕盤が十分な浸透抑制能を持つことを明らかにした。 水田輪作における新技術導入効果の解明については、1)水稲の湛水高密度散播直播栽培では、全刈収量が570kg/10a、60kg当たり費用合計は9,478円となり、現行栽培における生産コストの81%となった。大豆の有芯部分耕栽培では、全刈収量が289kg/10a、60kg当たり費用合計は12,051円となり、現行栽培における生産コストの66%となった。2)耕うん同時うね立て作業機を大豆、そば、麦、野菜に適用し、約110ヵ所、220haで実証試験を行った。なお、本作業機は、新潟県の大豆栽培で1,181haに導入されるなど普及が進んでいる。3)汎用型不耕起播種機の普及に努めた結果、導入面積は200haを超えたものと推定された。また、本機の現地試験を積極的に展開し、一部の試験では稲580kg/10a、麦420kg/10a、大豆250kg/10aと目標を超える収量を得た。なお、小明渠浅耕播種の導入面積は、200ha以上と推定された。 北海道および九州における畑輪作体系を確立するため、 生物機能を活かした化学肥料低減技術、病害虫抑制技術について、 北海道では、1)大豆の省耕起栽培における生育促進には、耕起しないことによる根粒着生の向上だけでなく、アーバスキュラー菌根菌の感染向上も関与するものと判断された。2)ジャガイモシストセンチュウ対抗植物候補となるトマト品種を見出し、温室試験において線虫密度を95%以上低減する効果を得るとともに、線虫密度が低又は中の現地ほ場土壌においても安定して密度を低減する効果を確認した。 九州では、1)サツマイモネコブセンチュウ密度を6段階に制御したほ場における甘しょ「コガネセンガン」の線虫被害を調査したところ、ホウセンカ根こぶ指数(採取した土壌でホウセンカを約1カ月間栽培した際の根こぶ着生程度を5段階で評価し、その平均値を百分率で表示した値)が50未満であれば許容できると判断された。 大規模経営体向け栽培技術の開発について、 北海道では、1)畦間48cm、6畦のてん菜および大豆汎用機である狭畦密植直播機械を試作し、土壌硬度が1MPa以上の不耕起ほ場においても、現行機種の約2倍となる7km/hで播種することが可能であり、出芽率も慣行耕起直播と同等であることを明らかにした。2)馬鈴しょのソイルコンディショニング栽培やてん菜の直播栽培等を核とした大規模畑作生産システムを導入することにより、経営全体の労働時間が慣行の33.6%にまで減少することを現地農家で実証した。 九州では、1)甘しょ「コガネセンガン」の収量およびいも重の分布は、畦幅120cmの野菜用中高平高畦を用いても畦幅90cmの甘しょ用慣行高畦を用いた場合と同等であり、だいこん作後に引き続き畦を連続使用して「コガネセンガン」を栽培するだいこん-甘しょ畦連続栽培が可能であることを示した。2)甘しょ「ムラサキマサリ」について、30~100g程度の種いもを横に2分割し、50穴深型セルトレイに植え付けて3~4週間育苗した「いも付き苗」を3月下旬~4月下旬に移植し栽培すると、慣行挿苗栽培と比較して同等以上の収量が得られ、株当たり上いも数が増加することを明らかにした。3)データロガ付GPSのベクトル情報からほ場内での機械の作業状態を自動識別する技術およびほ場内作業情報モニタリングプログラムを開発し、ほ場作業情報の効率的な取得を可能とした。
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