k.地域条件を活かした高生産性水田・畑輪作のキーテクノロジーの開発と現地実証に基づく輪作体系の確立

課題名 k.地域条件を活かした高生産性水田・畑輪作のキーテクノロジーの開発と現地実証に基づく輪作体系の確立
課題番号 2009013848
研究機関名 農業・食品産業技術総合研究機構
研究分担 (独)農業・食品産業技術総合研究機構,北農研,北海道水田輪作研究チーム
(独)農業・食品産業技術総合研究機構,東北研,東北水田輪作研究チーム
(独)農業・食品産業技術総合研究機構,中央研,関東東海水田輪作研究チーム
(独)農業・食品産業技術総合研究機構,中央研,北陸水田輪作研究チーム
(独)農業・食品産業技術総合研究機構,中央研,北陸大規模水田作研究チーム
(独)農業・食品産業技術総合研究機構,近農研,中山間耕畜連携・水田輪作研究チーム
(独)農業・食品産業技術総合研究機構,九州研,九州水田輪作研究チーム
(独)農業・食品産業技術総合研究機構,北農研,北海道畑輪作研究チーム
(独)農業・食品産業技術総合研究機構,九州研,九州畑輪作研究チーム
協力分担関係 北海道立中央農業試験場
拓殖大学北海道短期大学
国立大学法人北海道大学
国立大学法人帯広畜産大学
国立大学法人東京農工大学
岩手農研セ
秋田県農技セ
長野県農事試験場
富山県農林水産総合技術センター
福岡県農業総合試験場
研究期間 2006-2010
年度 2009
摘要 地域の条件を活かした高生産性水田輪作体系を確立するため、 最適耕起・播種技術を基軸とする効率的な施肥・除草・防除技術について、 北海道地域では、1)混合貯留乾燥装置を断熱材で被覆することにより、堆積層内における大豆の穀温を貯留後48 時間まで外気温よりも5℃ 以上高く保持でき、低温下でも大豆の乾燥を進められることを明らかにした。また、大豆及び水分吸収材としての小麦の混合比を任意に調整できる排出量可変コントローラを市販化し、現地の乾燥施設における実証運転により性能を確認した。 東北地域では、1)大豆のチゼル型有芯部分耕播種機のチゼル形状を改良し、多様な芯部分の形状の作出を可能とするとともに、平均播種作業速度を0.8m/s以上にまで速めた。 北陸地域では、1)グライ水田土では鋤床面からグライ層上限までの深さが大豆の鉛直方向の根伸長を決定し、根圏改善指標の目安になることを明らかにした。水田転換畑における排水機能低下の原因ごとに対策技術を整理し、暗渠機能を回復し、排水性を改善する技術として、本暗渠に籾殻簡易暗渠と縦型暗渠を連結する技術を提示した。本技術を導入するとグライ層上限が有意に低下し、大豆の根活性が向上するが、その効果は導入後3年目には消失するため、さらに改善する必要があることを確認した。2)耕うん同時うね立て播種作業機の大豆、そば、麦、野菜、飼料用とうもろこし、花き等における適応性を明らかにするため、約75ヵ所、112haの現地で実証試験を実施した。大豆における本機の利用は、新潟県では1,250ha、全国では北陸、東北を中心とした30県以上、2,000ha以上に普及していると推定された。3)排水不良田において、大豆の畦立て栽培は初期生育を促進し、排水良好田並の生育量を得られるが、分枝節数が少ない傾向があり、開花期以降は根の機能低下等の生育停滞とともに花蕾数と稔実莢数が減少するため低収となり、本栽培の湿害回避効果には限界があることを明らかにした。 関東・東海地域では、1)小明渠浅耕鎮圧播種栽培体系において、水稲跡の前処理耕うんにより、小麦では収量及び子実のたんぱく質含量が高まるが、大豆では湿った土壌が練られた状態となるため生育、収量が低下することを明らかにした。2)小明渠浅耕鎮圧播種機について、小明渠作溝ディスク補強材を小型化した試作機を製作し、問題なく小麦を播種できることを確認した。3)大豆の小明渠浅耕播種栽培における小明渠を利用したかんがいについて、流量460L/分とすると、20aのほ場の場合、所要時間は6時間、使用水量は170tとなり、慣行栽培の畝間かんがいとほぼ同等であることを明らかにした。 近畿・中国・四国地域では、1)中山間地の不整形・排水不良田における大豆の播種精度を向上させるため、大豆播種用の株間設定に対応した播種制御ECU(電子制御ユニット)を作成した。接地輪駆動の近農研式不耕起播種機を用いた麦跡大豆播種及び稲跡大麦播種における種子操出軸回転数と作業速度を解析し、これらの数値の変動からほ場の乾湿状態を把握できる可能性を示した。2)機械収穫に適した大豆の無中耕無培土栽培では、地下水位制御システムを活用して播種時の土壌水分を高めることにより、梅雨明け後から7月にかけての高温少雨期の播種においても出芽が安定し、「サチユタカ」よりも生育日数が短い品種を用いれば300kg/10a(坪刈り)の子実収量を得られることを実証した。3)大豆葉腐病菌が感染するには、病原菌が存在する土壌に葉が直接触れる必要があり、降雨等による土壌からの飛散では感染しない可能性を明らかにした。大豆の青立ちは、試験した5種のカメムシの中ではイチモンジカメムシが寄生した場合に最も発生しやすいこと、青立ち防止には子実肥大初期の防除が有効であることを20年度に引き続き、ほ場試験で明らかにした。また、大豆の病害虫診断用ホームページを更新した。 九州地域では、1)暖地の水田輪作地帯において問題となっているアゼガヤは、種子が覆土された条件でのみ湛水による出芽抑制効果が認められることを明らかにし、湛水条件で種子を土中に埋没させる代かき作業はアゼガヤの出芽抑制に寄与することを示唆した。 水田輪作に適する野菜の栽培管理技術については、1)短節間かぼちゃのセル成型苗機械移植は、移植後の手直しや補植を省略することができるため、10a当たりの移植作業時間を慣行の大苗手移植の10%以下に短縮できることを明らかにした。2)ミニトマトのセル成型苗移植栽培について、実証農家における苗植付け時間は慣行ポット苗を用いた場合の約1/2となり、育苗や定植の省力化・分散が可能なことを明らかにした。また、ミニトマトの半促成長期どり栽培について、経営モデルを用い、側枝葉利用、摘房を組合せた新栽培体系を導入した場合の販売額は慣行栽培における販売額を75.3万円/10a上回ると試算した。 直播水稲の生育安定化技術、超省力化技術等の開発について、 北海道地域では、1)乾田直播用の播き幅3cmの広幅まき条播のロータリシーダを開発した。無粉衣種子を播種して間断入水を行う場合、湛水を開始する時期は、播種後の有効積算温度(基準温度11.5℃)が50℃を越える出芽始め頃が適当であることを明らかにした。透水性の高いほ場では、窒素施肥に当たって基肥と追肥を組合せると基肥のみとした場合よりも多収になること、緩効性窒素割合の高い肥料の施用は、生育後期における茎数の増加を促進するが、低温年では登熟歩合を低下させるため、収量の増加には結びつかないことを明らかにした。 東北地域では、1)水稲の湛水高密度散播直播栽培に用いる鉄コーティング種子の製造に際して、密封式鉄コーティングの仕上げに用いる焼石膏を種子重の5%の過酸化カルシウム粉粒剤(成分濃度:16%)で代替すると開封後の発熱が抑えられるため、種子の発芽阻害リスクが低減し、ハンドリングも改善されることを明らかにした。 北陸地域では、1)エアーアシスト条播機を用いた水稲直播体系は、従来の播種方式に比べ、収量は同等だが、播種作業能率は1.0h/haを上回り6倍程度高まることを実証した。2)20年度に明らかにした直播水稲の出芽・苗立等は温度を変数とするアレニウス式で近似できるという知見に基づき、新潟県内の播種早限日推定マップを作成し、播種早限日は、現行基準に比べ、内陸地帯では最大6日早くなるが、海岸寄りの地域や佐渡島では、反対に最大で5日遅くなることを明らかにした。 近畿・四国・中国地域では、1)稲の病原糸状菌であるばか苗病菌、ごま葉枯病菌、いもち病菌や、病原細菌である苗立枯細菌病菌、もみ枯細菌病菌、褐条病菌を保菌した稲種子でも、鉄粉でコーティングして播種すると、育苗期におけるこれらの発病が抑制されることを確認した。  九州地域では、1)播種作業の能率向上と低コスト化を目的に、現地ほ場において、作業幅3.6mのショットガン直播機を用い、重量比で0.4倍の鉄をコーティングした種子を播種した結果、作業能率は目標とした1.60h/haを上回る1.13h/ha、全刈収量も目標とした533kg/10aを上回る561kg/10aを達成できた。2)皮膜形成型樹脂に質量比20%の銅粉(直径約15?m)を混合したスクミリンゴガイの忌避材を開発し、現地実証試験においてスクミリンゴガイの産卵をほぼ抑制できることを明らかにした。 水田輪作における新技術導入効果の解明について、 東北地域では、1)水稲の湛水高密度散播直播栽培と大豆の有芯部分耕栽培のコスト低減効果を20年度に引き続き検証したところ、水稲の湛水高密度散播直播栽培では、全刈収量は622kg/10aとなり60kg当たりの費用は合計で6,894円まで削減できたが、大豆の有芯部分耕栽培では、全刈収量が201kg/10aにとどまったことから、60kg当たりの費用は合計で11,696円と目標値の137%となり、費用を一層削減する必要があると判断された。 関東地域では1)稲、小麦及び大豆について、汎用型不耕起播種機の現地実証試験を行い、苗立ち数が確保された場合は、稲乾田直播では「コシヒカリ」で500kg/10a以上、小麦では「きぬの波」で440kg/10a以上、大豆では「タチナガハ」で250kg/10a以上の収量が得られることを確認した。2)大豆の不耕起播種栽培について、不適ほ場への導入を回避するため、汎用型不耕起播種機を導入している現地から収集した作業履歴と全刈り収量データに基づき不耕起播種栽培導入の不適地を明らかにし、マップ化した。3)稲、麦、大豆の2年3作体系における不耕起栽培において、大豆の収量は前作の麦及び前前作の水稲の耕起法の影響を受け、麦作前の耕起法ではプラウ耕とした場合の収量が不耕起とした場合よりも高く、水稲の耕起法では不耕起直播栽培とした場合の収量が代かき移植栽培とした場合よりも高いことを明らかにした。また、本作付体系における大豆の栽培では、施肥を行わない方が苗立ち数が向上し、収量が高くなることを認めた。 近畿・中国・四国地域では、1)広島県中山間地域の集落営農法人における水稲の鉄コーティング湛水条播栽培、大麦の部分耕栽培及び大豆の部分耕無中耕無培土密条栽培では、10a当たり作業時間(畦畔管理時間を除く)を8.9h、3.6h及び4.4hにまで削減できることを実証した。なお、60kg当たりの生産コストは、15年における中国地域の平均値との比較で、水稲では56%、大豆では45%それぞれ削減できたが、大麦では資材費・償却費の高さと低収量のため69%増となった。2)鉄コーティング種子の大量製造技術について、中国地域のJAライスセンターにおいて20年度に引き続き実証試験に成功するとともに、寒地(北海道岩見沢)に適応した技術を確立した。また、肥料の亜リン酸は、種子重の15%まで鉄コーティング層に取り込むことができ、種子の発芽を抑制しないこと、ピシウム菌に対する防除効果が高いことを解明した。 北海道及び九州における畑輪作体系を確立するため、 生物機能を活かした化学肥料低減技術、病害虫抑制技術について、 北海道では、1)大豆の根粒菌接種法を改良し、粒状化資材を播種溝に施用することで接種する手法を開発した。本手法は、菌液や種子粉衣剤を用いる従来の接種法よりも根粒着生の促進に有効なことを確認した。2)20年度に見出したジャガイモシストセンチュウ対抗植物候補となるトマト品種について、現地農家ほ場において極めて高い防除効果を示すことを明らかにした。 九州では、1)甘しょ培養苗に土壌病原菌であるつる割れ病菌Fusarium oxysporum BM3株を接種すると植物体の総乾物重が有意に減少するが、内生窒素固定細菌(Pantoea agglomerans MY1株)と共接種すると総乾物重は有意に増加することを明らかにした。2)甘しょ-たまねぎ-ソルガム-たまねぎという輪作試験において、1年目の甘しょ後におけるたまねぎの球生重は、単作の場合よりも約20%大きくなり、増収した。また、1年目の甘しょ後及び2年目のソルガム後のたまねぎにおける根のVA菌根菌感染率は、いずれも単作の場合よりも高い傾向を認めた。3)ソルガムをカバークロップとして4年間連続して除草剤を使用せずに栽培した場合、連作障害の生じにくい品種の作付により初期生育障害が発生しなかった処理区では、発芽後約2週間目及び再生後約2週間目に各1回の中耕を入れることで、雑草量を低く抑えることができた。 大規模経営体向け栽培技術の開発について、 北海道では、1)キャベツの2条収穫機のほ場作業効率(収穫機がほ場内に置かれる総時間のうち収穫作業を実施している時間の割合)は約24%と極めて低く、収穫システムのほ場作業量も2.2a/hにとどまった。また、施設における精切断・選別など調製作業の能率は約1,500球/hであり、10a分のキャベツ結球の処理に2時間以上を必要とするため、収穫調製システム全体としての能率は、人力による手刈り収穫・箱詰め作業と同程度であった。経営調査に基づき、機械収穫システムの導入効果を得るためには、収穫機のほ場作業効率をシステム開発目標である60%まで高める必要があることを明らかにした。2)てん菜及び大豆用の狭畦密植直播機、馬鈴しょ用の高精度播種機及び多畦収穫機のプロトタイプを作製した。このうち、狭畦密植直播機では7km/hの播種速度でも実用的に十分な精度の播種間隔を得られた。一方、馬鈴しょ用の高精度播種機では、種いもカッティング装置の精度が不十分であったが、多畦収穫機では作業時間を従来機の60%まで削減できた。3)ソイルコンディショニング栽培技術の実証試験を斜里町内の2ヶ所において実施し、いずれの試験でも慣行栽培に比べて収穫作業の能率が2倍以上高まることを明らかにした。 九州では、1)甘しょ養液育苗システムにおいて、目標とする苗生産量(500本/m2/月)の約80%の生産量を得ることができた。2)タッチパネルモニターによって入力や情報閲覧などの操作を簡便にするとともに、GPSや農作業記録装置を用いることにより農作業情報(作業ほ場、作業時間、実作業面積)の入力を省力化したパソコン版農作業日誌を開発した。
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