課題名 | q.有機性資源の農地還元促進と窒素溶脱低減を中心にした農業生産活動規範の推進のための土壌管理技術の開発 |
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課題番号 | 2009013885 |
研究機関名 |
農業・食品産業技術総合研究機構 |
研究分担 |
(独)農業・食品産業技術総合研究機構,中央研,資源循環・溶脱低減研究チーム (独)農業・食品産業技術総合研究機構,近農研,広域農業水系保全研究チーム (独)農業・食品産業技術総合研究機構,九州研,土壌環境指標研究チーム (独)農業・食品産業技術総合研究機構,野茶研,資源循環・溶脱低減研究チーム (独)農業・食品産業技術総合研究機構,畜草研,資源循環・溶脱低減研究草地サブチーム |
協力分担関係 |
山形県農業総合研究センター 岩手県農業研究センター 岐阜県農業技術センター 新潟県農業総合研究所畜産研究センター 群馬県農業技術センター 神奈川県農業技術センター 高知県農業技術センター 三重県農業研究所 静岡大学 神奈川県畜産技術センター |
研究期間 | 2006-2010 |
年度 | 2009 |
摘要 | 有機性資源の適正な農地還元を推進するため、1)堆肥連用による窒素蓄積を考慮した施肥技術を確立するためのツールとして、80℃16時間水抽出とCOD簡易測定による畑土壌可給態窒素の現場対応型迅速評価法を開発した。本法は、高価な分析機器を必要とせず、保温機能付き電気ポットと電子天秤、市販の水質検査用COD簡易測定キットのみで実施できることに加え、毒劇物試薬を使用せず、操作も簡単なため、普及員、営農指導員、生産者による実施が可能である。また、生土でも測定できるため、風乾調整が不要で、土壌採取から2日間で分析できる。 農業生産活動に伴う硝酸態窒素の流出負荷低減に向けて、1)多量の施肥を必要としトンネルマルチで栽培される冬作有機レタスでは、収穫後の作土に6~20kg/10a程度の硝酸態窒素が残ることを明らかにするとともに、ビニールマルチを維持して溶脱を抑制することによって次のにんじん作における基肥窒素を省略できる可能性を示した。2)窒素として80kg/10a相当の豚ぷん堆肥を10年間連用した淡色黒ボク土ほ場において、窒素施用量を4年間継続して2割削減すると、とうもろこしやはくさいの収量を維持しつつ、1m深の硝酸態窒素濃度を削減前の50~66%に低減できることを確認した。3)九州沖縄の黒ボク土の未耕地において、土壌の窒素保持能と、全炭素含量、pH(H2O)及び酸性シュウ酸塩可溶アルミニウム含量との間にそれぞれ負、負、正の高い相関関係を認め、これらの値から耕地化前の硝酸態窒素保持能を推定できることを示した。4)重粘土ほ場を対象とした栄養塩流出モデルを構築し、作物や施肥体系に関わらずほ場から暗渠などに流出する窒素の濃度などを再現できることを明らかにした。本モデルは、施肥体系の違いなどが重粘土ほ場における窒素流出特性に及ぼす影響を予測・評価する際に有用である。5)採草地を対象に生産管理条件を考慮した窒素動態のプロトタイプモデルを構築し、牧草の地上部と地下部における窒素濃度の季節変化を再現できることを確認した。また、放牧草地を主体とする傾斜小流域において河川から排出される硝酸態窒素の濃度は、窒素の年間施用量が97kgN/haの場合は1.6mgN/Lであるが、42kgN/haでは0.4mgN/Lと、森林流域と同程度に低いことを明らかにした。 作物養分要求に基づく高機能家畜ふん堆肥の施用技術を開発するため、1)堆肥化過程で発生するアンモニアを再利用して調製した全窒素濃度4%前後の窒素付加堆肥の肥効率は0.7であり、土壌中での窒素の溶出はなたね油粕よりも速く、速効性の有機質肥料として利用可能であることを明らかにした。また、本堆肥の施用により、化学肥料主体の慣行施肥と同等の収量、品質が得られ、跡地土壌の交換性カリウム含量も一定に保たれることを、にんじん、すいかなどの野菜栽培農家ほ場において実証した。さらに、窒素付加堆肥を含む成分調整成型堆肥について、窒素肥効の特性や施肥技術をマニュアルとしてとりまとめた。2)畑ほ場において、窒素付加堆肥ペレット施用は、通常の堆肥ペレット施用より亜酸化窒素発生量は小さい傾向にあることを明らかにした。3)高温耐性で硝化活性を有する分離菌株を堆肥材料へ添加することにより、堆肥化過程におけるアンモニア発生が低減することを明らかにした。4)秋馬鈴しょ及び大麦栽培における成分調整堆肥を利用した減化学肥料栽培では、化学肥料のみで栽培した場合よりも窒素の作物利用率が高く、環境への流出量が少ないことを諫早湾干拓地の現地ほ場試験で明らかにした。 閉鎖系水域における水質保全を目指して、1)香川県西部の高瀬川流域における年間流達負荷量(排出された負荷量のうち自然の浄化作用などを受けずに海域に到達した負荷量)を負荷流出算定モデルにより計算し、窒素は50.5t、リンは6.3t、CODで133.7t程度と推定した(CODの流達負荷量は、海域に到達した有機物量の分解(酸化)に要する酸素量で表した値)。不作付地(農地の約1割を想定)に作付して慣行の施肥管理を行うシナリオ、作付農地全体に慣行の施肥管理に比べ負荷を3割低減する技術を導入するシナリオ及び不作付地に作付し、農地全体に慣行の施肥管理に比べ負荷を3割低減する技術を導入するシナリオが水質に及ぼす効果をそれそれ推定し、シナリオにより、海域への窒素流達負荷量は最大で10%程度異なるが、りんとCODの流達負荷量には大きな違いがないことを確認した。2)GISデータベースを用いて算出可能な4つの土地利用区分(水田・畑・森林・都市その他)の面積割合のみから、当該地域を流域とする河川の河口部における窒素濃度を予測する簡易モデルを開発するとともに、本モデルを香川県に適用するために必要なパラメータを香川県内の26河川のデータから算出した。また、備讃瀬戸における流況再現モデル実験により、本海域では栄養塩と潮流の強さが赤潮等の発生要因であり、養殖のりの色落ち被害は備讃瀬戸東部で発生しやすいことなどを産業技術総合研究所中国センター等との共同研究により明らかにした。3)茶園において、溶存無機態窒素濃度が約20mg L-1 の地下水に化成肥料を溶かし込み、日射量に対応してかん水量が変化する日射拍動自動かん水装置を用いて低流量点滴かん水を行うことにより、慣行施肥に比べて年間の窒素施用量を約5割、肥料コストを1.4万円/10a削減するとともに、慣行施肥・慣行かん水と同等以上の収量と品質を得ることに成功した。なお、本施用法における地下への差引窒素負荷(溶脱窒素量からかんがい地下水に含まれる窒素量を差し引いた値)はマイナスであった。また、日射拍動自動かん水装置の低コスト化に取り組み、10万円強で10aを管理可能な装置を作成できた。さらに、広島大学等との共同研究により、丸亀平野を対象に当該技術を導入可能な地域を検討し、250mメッシュ単位で推定した地下水流動量と地下水硝酸性窒素濃度分布から、水稲栽培へのかんがいを想定した場合の窒素肥料削減可能量の分布を求めたところ、地下水かんがいによる地下水損失量が地下水流動量の10%を超える「地下水過剰使用注意区域」が7割程度を占めることを明らかにした。 |
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